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作品のタイトル「さるがみた星」が銀箔(ぎんぱく)で記されている=丹波市市島町上田
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作品のタイトル「さるがみた星」が銀箔(ぎんぱく)で記されている=丹波市市島町上田
山名酒造の仕込み蔵の壁面に作られたアート作品=丹波市市島町上田
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山名酒造の仕込み蔵の壁面に作られたアート作品=丹波市市島町上田
東亨さん
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東亨さん

 銘酒「奥丹波」で知られる山名酒造(兵庫県丹波市市島町上田)の仕込み蔵の壁面が、現代アートに生まれ変わった。手掛けたのは新進の工芸作家、東亨(あずまりょう)さん(33)=堺市。見た目はありふれた、少し赤茶けたトタン板。そこに“時間の魔法”をかけ、小さく作品名を記した。タイトルは「さるがみた星」。今年5月に亡くなった世界的霊長類学者・河合雅雄さんへの尊敬の念が込められている。(川村岳也)

 仕込み蔵は大正時代に建てられ、その壁面はトタン板に木目調のプリントが張られていただけだった。「いけてない」と感じていた同酒造相談役の山名純吾さん(61)が改修を考えていたところ、知人から東さんを紹介された。

 東さんが依頼を受けたのは昨年夏。壁一面(幅約11メートル、高さ約6メートル)を手掛けるのは初めてで、最初は戸惑ったという。思い浮かんだのが、自然豊かな丹波の景色。東さんの妻が丹波市出身だった縁もあり、たびたび丹波を訪れた。気候や食べ物などに魅了され、「丹波の地に自分の作品を残したい」と考え、引き受けることにした。

 東さんは制作前に訪れた山名酒造で、河合雅雄さんを特集した季刊誌を手にした。ひげを蓄え、仙人のように悠然とたたずむ河合さんの写真にひかれた。銘酒「奥丹波」の題字を揮毫(きごう)し、生前は山名酒造の酒を愛飲していたことを知った。研究者として名をはせながら90歳を超えてなお、長編ファンタジー小説を書き上げた生き方もつづられていた。

 東さんは昨年秋から作業に取りかかった。木目調のプリントをはがす作業で、蔵の中が見えた。ほうろうタンクの間を職人たちが仕込み作業にいそしむ姿に、「見たことのない世界をのぞき込んでいるようで、SFみたいだった」と振り返る。サル学の権威とされる河合さんと、その河合さんが愛した酒蔵の光景。二つが合わさり、タイトル「さるがみた星」が生まれた。

 プリントをはがし終えると、一面銀色に輝くトタン板があらわになった。「今のままでも結構いいな」。東さんは素材の持つ風合いをそのまま生かすことにした。金属のさびを促す薬品を塗り、壁に銀箔(ぎんぱく)でタイトルを記した。壁面は今年9月、完成した。

 東さんは「年月がたつにつれ、壁面には赤色のさびが付着する。その変化を楽しんでもらえれば」と話す。山名さんは「うちの酒は素材を生かしたプレーンなものだが、それと呼応しているようだ」と、満足そうに話していた。

■工芸作家の東さん「金属がなりたいもの作っている」

 東亨さんの作品は、素材を主体として扱い、風合いや色合いを生かすのが特徴。主に、廃材の金属板や河原で拾った小石などを使って、作品を仕上げる。東さんは「僕が作りたいものというより、金属がなりたいものを作っている。素材に動かされている」と話す。

 1988年、堺市出身。祖父が美容師のハサミ作りを、父が彫金をしていた影響で、金属工芸に興味を持つようになった。大阪芸術大学を卒業後、定期的に個展を開く一方、社会福祉法人で働き、障害のある人の作品作りを支援している。

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