絵柄と本物見比べて 動植物の標本と焼き物を同時展示 兵庫陶芸美術館

2021/12/11 05:30

トラやサメの剥製、標本と焼き物が一緒に並ぶ会場=兵庫陶芸美術館

 近世以降の陶磁器に描かれた動植物モチーフに着目した特別展「やきものの模様」(神戸新聞社など主催)が11日、兵庫陶芸美術館(兵庫県丹波篠山市今田町上立杭)で開幕する。三田市の県立人と自然の博物館(ひとはく)と連携し、動植物の標本類を焼き物と一緒に展示。迫力満点のトラやシカの剥製(はくせい)がずらり鎮座し、まるで動物園のような一室も。担当者らは「絵柄と本物の動植物を見比べて楽しんで」とアピールしている。(堀井正純) 関連ニュース まるで「ツバメ団地」、軒下に50個近い巣 ふんよけの傘カラフルに 丹波篠山のゴルフ場 雇用促進、地域活性へ協定 丹波市とリクルート 28日にはセミナー 温室ガス排出48%削減 2030年度までに 加古川市、目標改定へ


 会場を飾る焼き物は江戸後期の古伊万里や三田焼、明治以降の出石焼や美濃焼など、館蔵品を中心に79点。シュンラン、タンチョウヅル、アオザメといった、器を彩る動植物の標本類30点を同博物館から借り受けた。
 近世の陶磁器に描かれた図柄の大半は、花鳥画、山水画などの絵画や絵手本、図案集を基に制作。葛飾北斎の「北斎漫画」「富嶽百景(ふがくひゃっけい)」を下敷きにした絵皿も並ぶ。「吉祥の意味を込めた絵柄も多い」と企画した岡田享子学芸員。様式化された図柄も少なくないが、江戸後期の博物学ブームの影響などもあってか、細密でリアルな表現も見受けられる。
 本展の特徴は、美術・工芸的な視点に加え、同博物館の協力で、科学的観点から作品を見直したこと。例えば、有田で焼かれた「染付椿鳥図大鉢」は、鳥とツバキの図柄としか捉えていなかったが、鳥をヒヨドリと特定。他の器でも、コサギ、カワセミなどできるだけ題材となった動植物の種名を明らかにした。
 人間国宝・富本憲吉(1886~1963年)が植物を観察し、そのエッセンスを図案化した文様にもスポットを当てた。代表作「色絵金彩羊歯(しだ)模様大飾壺(おおかざりつぼ)」にあしらわれた文様のモデルが、里山に多く見られるシダ植物「シシガシラ」の可能性が高いことを、同博物館の鈴木武研究員が指摘している。
 同展は来年2月27日まで。「八代 清水六兵衛展」と同時開催。原則月曜休館。一般600円ほか。同館TEL079・597・3961

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