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本州一低い中央分水界が通る石生交差点。標高は約95メートル=丹波市氷上町石生
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本州一低い中央分水界が通る石生交差点。標高は約95メートル=丹波市氷上町石生
「日本一低い」と記された看板がちらほら=丹波市氷上町石生
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「日本一低い」と記された看板がちらほら=丹波市氷上町石生
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 高さ1位を競う事例は枚挙にいとまがないが、「低さ1位」をアピールする場所もある。それが兵庫県丹波市氷上町石生の水分(みわか)れだ。市などは「本州一低い中央分水界」を打ち出し、テレビ番組でも特集される。しかし、周辺を歩くと、「日本一低い」と紹介する看板がちらほら。本当はどっち?

 「本州一低い中央分水界、というのが正しい表現です」。氷上回廊水分れフィールドミュージアム館長補佐、菊川裕幸さんが説明してくれた。日本一は北海道の新千歳空港付近で、標高20メートルほど。対する水分れは約95メートルだ。

 菊川さんは「谷中(こくちゅう)中央分水界でなら、日本で最も低い場所」とも。谷中分水界とは、字の通り谷あいの分水界のこと。説明がややこしいため、同ミュージアムなどでは主に「本州一」として紹介している。

    ◇    ◇

 「日本一」の称号がいつ冠せられたのか、定かではない。認知されるようになったのは1988年、丹波地域などで催された「北摂・丹波の祭典ホロンピア’88」がきっかけだった。

 当時の氷上町はホロンピアに合わせ、同ミュージアム前身の水分れ資料館と、水分れ公園を整備。広報紙には「日本一低い中央分水界」と紹介した。さらに同じ年、中央分水界が通る全国29市町村が集まった「水分れのまちサミット」でも、大々的にアピールした。

 それから約15年後。通説を覆す調査が行われた。日本山岳会が、創立100周年を記念した「中央分水嶺(れい)踏査事業」だ。

 事業を提案し、実行委員を務めた同会の近藤善則さん(74)=東京都練馬区=は「全国調査はそれまでなかった。最初は尻込みした人もいたが、最後には会員たちの使命感で達成できた」と振り返る。

 各地の山岳会メンバーに呼び掛け、分水界がある地元住民とともに、2003年9月から調査は始まった。全国の中央分水界1832カ所にチェックポイントを設定し、延べ5947人がくまなく歩いた。

 近藤さんが地図を広げた時、北海道の標高が気になった。「水分れより低いのでは」。予測はずばり当たった。

 活動が注目されると、近藤さんらに、マスコミなどから問い合わせが相次いだ。バスガイドの講師を務める女性からもあった。反響の大きさに、近藤さんは「分水嶺は高さばかりが強調されるが、低い場所にも魅力があると思い知らされた」と語った。

 約3年をかけ集めた標高や植生などのデータは、冊子「日本列島中央分水嶺踏査報告書」とCDにまとめられた。同会が07年に出版したが、現在は絶版となっている。

    ◇    ◇

 水分れが「本州一」と確定して約15年。現地には今も誤解を招く看板が残る。地元の石生区自治会長、山田康さん(72)は「間違っていれば、指摘しているんだけどね」と、苦笑する。

 地元住民らは「水分れフィールドミュージアム友の会」を発足させ、情報発信に力を注ぐ。山田さんは「日本一でなくて残念? そんなことない。はっきりと目に見えるわけではないが、水分れは地元の宝です」。(川村岳也)

■低いからこそ交通の要衝に

 「水分れ」が文献に登場するのは、江戸時代後期にまとめられた地誌「丹波志」。現在の高谷川が「水分川」として記されている。水が一方は播磨へ、もう一方は丹後へと流れることから「水分」の名前が付けられた-としている。

 標高が低い水分れを通れば、大きな峠を越えずに但馬、播磨、摂津を往来できた。市文化財保護審議会委員の大木辰史さん(69)は「低い分水界だからこそ、交通の要衝になり、経済的メリットを生み出した」と解説する。

 大木さんによると、実測による初の日本地図を作った伊能忠敬も測量のために通ったとか。「低くて歩きやすいからこの道を選んだのでは」と推測する。

 現在も交通量は多く、旧氷上郡で初めて信号機が設置されたのも、水分れ交差点だったという。

【中央分水界】降った雨が異なる川に流れる境界を「分水界(分水嶺)」といい、太平洋側と日本海側の分水界は「中央分水界」と呼ばれる。北海道から鹿児島県まで約5千キロあるが、境界線の引き方については諸説ある。

=おわり=

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