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サイホンでコーヒーを入れる新浜実子さん。常連客との会話に笑顔がはじける=加古川市加古川町溝之口
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サイホンでコーヒーを入れる新浜実子さん。常連客との会話に笑顔がはじける=加古川市加古川町溝之口
数々の作品が掛けられたビーチの壁。客はコーヒーを飲みながら美術について気軽におしゃべりできた=加古川市加古川町溝之口
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数々の作品が掛けられたビーチの壁。客はコーヒーを飲みながら美術について気軽におしゃべりできた=加古川市加古川町溝之口

 JR加古川駅前(兵庫県加古川市)の画廊喫茶「ニュービーチ」が26日に閉店する。多くの市民らが表現活動の場として利用し、地域の文化の発信地となってきたが、36年の歴史に幕を下ろすことになった。経営する新浜実子さん(77)は「たくさんの出会いに恵まれた」と感謝し、「加古川の芸術文化を発展させたいという思いで走ってきたけど、もう潮時。役目は果たせた」と話す。(津田和納)

 店は1982年3月、駅前再開発ビルの地下にオープン。当初は普通の喫茶店だったが、新浜さんの知人で、池田20世紀美術館(静岡県)の館長だった故牧田喜義さんから「地域のために壁を有効に使うのも使命ですよ」と声を掛けられ、同年11月から壁面を無料で開放し始めた。

 当時、市内に画廊は少なく、新浜さんは「一般の人が芸術を楽しめる場は乏しかった」と振り返る。市美術協会所属の洋画家故山本嘉彦さんから助言を受け、数々の展覧会を企画。プロからアマまで、これまでに千回を超える展覧会が開かれた。

 店は地元の芸術家が集い、熱い議論を交わす場にもなった。「最初は先生同士で目も合わさなかったのよ」と言うが、山本さんや日本画家の故西川惟夫さん、書家の故山本隣江さんら、店で意気投合した作家が合同作品展を開くように。「ジャンルの垣根を超えた交流が生まれ、表現の幅の広がりも見えた」と話す。

 閉店は今年初めに決意。ここ数年、市内には公営のギャラリーができ、地元の芸術文化を取り巻く環境は変わった。「行政が芸術を後押しする体制ができつつある。私の役目は終わった」と新浜さん。「体力もしんどい。優柔不断やから、『私、本当に辞められるのかしら』と自問したけど、やっと心が決まった」と晴れた表情で語る。

 5月に入ってから、店には連日、別れを惜しむ大勢の客が詰め掛ける。「ビーチの壁が楽しみやったんよ」「本音で話せる場所やったわ」。客の言葉一つ一つに新浜さんは「ありがとう」と笑い、「お世話になりました」と見送る。「多くの人に支えられて、本当に幸せ者だった。次は自分が観覧する側になって、いろんな場所に足を運びたい」とほほ笑んだ。

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