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終活講座でエンディングノートの意義を伝える後藤恵子さん=加古川市加古川町北在家
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終活講座でエンディングノートの意義を伝える後藤恵子さん=加古川市加古川町北在家
多彩なエンディングノート
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多彩なエンディングノート

 2065年、日本人女性の平均寿命は91・35歳、男性が84・95歳になるという予測がある。「人生100年時代」と言われるゆえんだ。同時に「終章」の生き方が注目されるようになった。どうすれば人間らしく、充実した人生をまっとうできるのか。兵庫・東播地域の市民の模索を追った。(本田純一)

 父の葬儀の夜、机の引き出しから1枚の紙が見つかった。「尊厳死を望んでいる。延命治療をしないでほしい」。こうした内容がA4用紙にびっしり。

 「そんなことを考えていたなんて、全然知らなかった」。後藤恵子さん(60)=神戸市西区=の父は2017年、大動脈解離のため86歳で亡くなった。「急死でなければ延命治療をしていた。父の意に反する可能性があったと思うと…」

 日常会話の中で、父から自分の遺影や葬儀で流してほしい音楽などを聞いていた。身内だけの家族葬を望んでおり、かなえることができた。

 引き出しには、家族へのメッセージを書いた紙もあった。「みんなのおかげで悔いのない、いい人生が送れた」と。母や妹たちと泣いた。「死ぬ前に聞いていれば、『そんなに家族を思ってくれていたんだね』ってお礼が言えたのに」

   ◇    ◇

 空き家になった夫の実家の片付けに悩んだこともあった。何が大事な物で、不要品はどれか、一つ一つの判断が難しく5年ほどかかった。親が元気なうちに大切な情報を聞き、自分の手で整理しておいてもらう必要があると痛感。民間資格の「生前整理アドバイザー」を取得し、16年3月からエンディングノートの講座を開くようになった。

 自身のノートには、個人的な情報が事細かに記されている。銀行口座と暗証番号、証券会社名と口座情報、クレジットカードの暗証番号…。重病の際は告知を希望し、延命措置は不要。臓器提供はせず、葬儀は家族葬で散骨を望み、お骨の一部はネックレスにして遺影のそばに置いてほしいと書いた。

 ノートの内容は、同居の長女に口頭で伝え、保管場所も話してある。旅行に行くときには毎回、念を押して伝えるため、「旅行に行くの? 死にに行くの?」と苦笑される。

 「感謝の思いや大切な情報は、生きているうちに家族に伝えて」。後藤さんは受講生たちに訴えている。

   ◇    ◇

 エンディングノートは死への準備。多くの人に抵抗感もある。後藤さんの講座を受ける社会福祉協議会勤務の女性(31)=加古川市=は、何でも話し合える家族だが、終活については進まない。「祖父が亡くなった時、生前に希望を聞いていれば、納得できる葬儀ができたはず」。学んだことを両親に伝え、ノートを書いてもらうつもりだ。後悔はしたくない。

 加古川市内で年金生活を送る男性(66)は昨春から書いている。こだわるのは自分史。「子どもたちにありのままの自分を伝え、生きた証しにしたい」。趣味で集めたレコードやCDの始末についても記した。それぞれにいくらの価値があり、どこで売るべきか。

 ただ、家族には執筆していることを伝えていない。以前、興味があることを伝えただけで「縁起でもない」と顔を背けられた。

 確かに、自身にとっても死はまだ遠い話。「ノートを書き続けるうちに、心の準備ができるのかなぁ」

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