東播

  • 印刷
練習に汗を流す福田俊太さん(右から2人目)=加古川市加古川町大野
拡大
練習に汗を流す福田俊太さん(右から2人目)=加古川市加古川町大野
明るい性格で、お年寄りからも大人気。右が福田さん=稲美町国安
拡大
明るい性格で、お年寄りからも大人気。右が福田さん=稲美町国安
週末はリーグ戦。ファンの少年と勝利を喜ぶ=加古川市加古川町大野
拡大
週末はリーグ戦。ファンの少年と勝利を喜ぶ=加古川市加古川町大野
神戸新聞NEXT
拡大
神戸新聞NEXT

 サッカー関西1部リーグ「バンディオンセ加古川」の選手たちは、高齢者介護の施設で働きながら上位進出を狙う。昨年、チームは「日の出医療福祉グループ」(兵庫県加古川市)と連携し、選手ら40人のうち19人が介護施設の正職員として就職した。選手は安定収入が得られる一方、人手不足に悩む業界はマンパワーを手に入れた。Jリーガーを目指す介護職員に密着した。(小森有喜)

 関西1部は、J1を頂点にした5番目のリーグ。サッカーだけで生計を立てることは難しく、多くの選手がアルバイトなど続けながら練習に励む。

■2時間の練習に集中

 バンディオンセの主将、福田俊太主将(31)は近畿大学卒業後に加入し、ディフェンダーとして活躍。昨年はリーグのベストイレブンにも輝いた。

 毎朝午前7時前に起床し、同県高砂市の自宅から日岡山公園グラウンド(加古川市)まで車を走らせる。練習は週5~6日で、午前9時から約2時間。「集中していこう!」「ラインを上げろ!」。限られた時間を精いっぱい活用し、ほぼ休まずピッチを駆け回る。

 ゴールやボール、飲料水など、準備も片付けも選手自ら行う。チームからの給料だけでは生活できない。全員が他の仕事を兼ね、スパイクなどの道具もすべて自費でそろえる。

 午前11時ごろ、練習を終えた福田さんはシャワーを浴び、大慌てで車に乗り込んだ。「この時間が一番バタバタです」。信号待ちの間におにぎりを頬張り苦笑い。向かう先は、昨年から働く日の出医療福祉グループの特別養護老人ホーム「稲美苑」(同県稲美町)だ。

■笑顔絶やさずケア

 到着すると、利用者の昼食が始まる。練習着からエプロンに着替えた福田さんが現れ、配膳と食事の介助を始めた。90代の男性が「こないだの試合はどうやってん」と尋ねると、福田さんは「完勝やったで」と笑顔。男性も「そうかそうか」とほほ笑んだ。食事の介助にかける時間は、1人に15~30分ほど。スプーンでゆっくりと口に運ぶ。

 「福田君、入浴行ってくれるか」。先輩職員に声を掛けられ、福田さんが浴室に入った。そこから3時間近く浴室に入りっぱなしで介助。「お年寄りは肌が弱いし、転倒の危険もある。一番気を使う仕事です」。風呂から出てきた福田さんは汗だくで「正直きついっす」と笑い飛ばす。他の職員が「朝から走り回った後でよくあんなに動けるなあ」と感嘆していた。

 休憩をはさみ、夕飯の準備と介助。その後、利用者を部屋に連れて行き、ベッドに寝かせる。体が大きい人は、福田さんが率先して担当する。おむつ交換やトイレの介助、ごみ捨てなどを終え、仕事が終わるのは午後9時を回る。

 チームの守りの要である福田さん。夜は対戦相手の試合映像に目を凝らし、攻撃スタイルを頭にたたき込む。「関西1部リーグで優勝しないとJリーグには届かない。負けるわけにはいかない」。限られた時間をサッカーに費やし、勝負に執念を燃やす。

■施設側にもメリット

 福田さんが勤める日の出医療福祉グループは、播磨地域を中心に介護事業を展開。バンディオンセの有力スポンサーの一つでもある。昨年、選手の就労を持ち掛けた。西敏行人事部長(45)は「選手は愛想が良くて体力もあり、一つのことに打ち込むことにたけている。利用者や職員から大好評」と評価する。

 バンディオンセの大塚靖治代表(35)は「選手のセカンドキャリアに役立つ」と話す。昨年チームを引退した選手の1人は、介護福祉士の資格取得を目指し、同グループの施設で働き続けている。

東播の最新