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認知症の人の「世界」を理解することが大事と訴える大阪大大学院の佐藤眞一教授=大阪府吹田市
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認知症の人の「世界」を理解することが大事と訴える大阪大大学院の佐藤眞一教授=大阪府吹田市
文字ではなく、文字の色を声に出して読む心理学の実験。認知症の人のもどかしさを体験できる
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文字ではなく、文字の色を声に出して読む心理学の実験。認知症の人のもどかしさを体験できる
エンディングノートの活用を提案する竹裏由佳さん=かこむ
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エンディングノートの活用を提案する竹裏由佳さん=かこむ

 認知症が進行すると、心の動きを言葉にすることが難しくなる。「認知症の人の心の中はどうなっているのか?」(光文社新書)を執筆した大阪大大学院の佐藤眞一教授(高齢者心理学)は、認知症の人は孤独や苦しみを感じており、その人が認識している「世界」を理解して共に生きる姿勢が重要と訴えている。(聞き手・切貫滋巨)

 -認知症はどんな病気か。

 近い将来、65歳以上は5人に1人がなり、85歳以上なら50%以上がなるといわれる。国民的な病気ともいえる。最大の原因は加齢で、年を取れば誰もがなる可能性があるため、認知症の人を知るのは将来の自分を知ることでもある。

 黄、赤、青…と書いた図を見てほしい。有名な心理学の実験だが、文字の色だけを声に出して答えようとしても、思い通りにいかないだろう。人は文字や色を見ると自動的に認知機能が働くので、二つがぶつかると、うまく判断できない。認知症の人はこれに似たもどかしさを感じており、心を理解する第一歩になる。

 -よく「家族に物を盗まれたと主張する」、「お金に執着する」と言われる。

 例えば、さっき自分で財布を引き出しにしまったとしても、そのことを覚えられないので、急になくなったと思う。本人にとってはそれが真実。じゃあ近くにいる誰かが持っていったに違いない、となる。本人の世界ではある意味、健全で正常な反応といえる。

 お金のことを気にするのも、誰もが心の中で思っている「お金はとても大切」ということをストレートに表現してしまうだけ。急にお金に執着するようになるわけではない。

 -認知症の予防や治療は本当にできないのか。

 最も多い「アルツハイマー型」など、多くは予防が困難なことが分かっている。政府が本年度まとめた認知症対策の新大綱でも、予防の定義を「認知症にならないという意味ではなく、なるのを遅らせる、進行を緩やかにすること」とわざわざ明記している。

 今の薬は一時的に症状を改善したり、進行を遅らせたりするだけで、根本的な治療はできない。

 -治療も予防もできないなら、どうすべきか。

 認知症の診断基準の一つは「日常生活に支障がある状態になる」こと。家族らが質の高い介護をし、生活しにくさを解消するのが、唯一の対策ではないか。そこで大事になるのは人間関係で、本人とのコミュニケーションが鍵を握る。

 認知症の人は他人の表情を読み取りにくくなるが、喜びはほぼ分かり、嫌悪もかなり読み取れるという研究がある。感情の伝染が起こりやすいとも言われる。ということは、周りが大笑いすれば、本人も楽しい気持ちになる。逆に介護を嫌々していることが表情に出れば、伝わってしまう。

 実はアルツハイマー型は、理由もなく幸せな気持ちになる「多幸症」になる傾向がある。周りが症状を理解し、生活しやすいように対応できれば、いくらでも幸せな気持ちで暮らすことができるだろう。

    ◇    ◇

■自分の情報、元気な時に記録を エンディングノート講座主宰・竹裏さんに聞く

 認知症の予防が難しいのなら、事前に何ができるだろうか。「エンディングノート」の使い方講座を開く兵庫県加古川市の竹裏由佳さん(51)は、認知症になった時を想定し、ファイルに自分の情報をまとめておくことを勧める。

 -エンディングノートは、死後に家族が困らないために書くイメージだが。

 例えば、認知症の人は子どもの頃の愛称で呼ばれると、安心する場合がある。古里の話をすると、目を輝かせて話すことも。より良い介護にはコミュニケーションが大切だから、介護する側は好みやどんな人生を歩んできたかを知りたい。でも本人はもう語れず、夫婦でも共有してない情報はたくさんある。だから自分のために使える情報を、元気なうちに書いてほしい。

 -具体的にどういう場面で役立つのか。

 ある施設で午後3時になると「バス、バス」と、歩き回るおばあちゃんがいた。周りに聞くと、昔、幼稚園から帰ってくる孫をいつもバス停まで迎えに行ってたらしい。だから時間になると「お迎えに行かなきゃ」となる。そういうストーリーを知っていれば「今日は休みよ」などと言って、徘徊を防ぐことができる。でも本人から事前に聞いていなければ、「なぜだろう」と思い続けるしかない。

 -何を書くのか。

 食べることは最後まで楽しみだから、好きな食べ物や嫌いな食べ物。昔の記憶は残りやすいので、子どもの頃にどんな遊びをしたかや、どんな仕事をしてきたかなど。認知症になった時、介護する人に何を知っておいてほしいかを想像して書く。家族らにノートの存在を伝えておくことも大事だ。=終わり

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