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再建した自宅で暮らす松崎精さん、広子さん。被災前の自宅が写った空撮写真を眺める=茨城県常総市
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再建した自宅で暮らす松崎精さん、広子さん。被災前の自宅が写った空撮写真を眺める=茨城県常総市

 「保険がなかったら、今ごろどうなっていたか…」

 松崎精さん(86)は、真新しい壁、ふすまに囲まれた居間で、妻広子さん(79)とうなずき合った。

 2015年9月の関東・東北豪雨で約8キロ北の鬼怒川が決壊、茨城県常総市の自宅に濁流が押し寄せた。

 市街地だが農業用水が流れる支流との合流点に近く、あふれた水が丸3日引かなかった。松崎さんが避難先の市役所から自宅に戻れたのは4日後。畳は重なり、テレビやたんすは泥だらけ。壁紙も剥がれ落ちてカビが広がった。「使えるものは何にも残ってなかった」と振り返る。

 被害は「大規模半壊」と認定され、仮住まいを経て約1年半後に自宅を建て直した。費用は約2600万円。被災者生活再建支援金上限の300万円に加え、水害補償付き火災保険と家財保険を合わせて約1700万円を受け取り、費用の8割近くをまかなえた。

 新しい自宅は木造2階建て延べ約130平方メートル。被災前より少し狭くなったが満足している。約40年前に火災保険に加入し、10年ごとの更新で数十万円の掛け金を支払ってきた。いつの頃からか、水害補償を追加。このことをすっかり忘れていたが、これが再建を後押しした。広子さんは「何も起きなければ掛け金は高いなって思うけど、入ってて本当によかった」と話す。

     ◇

 再建を支えるはずの損害保険だが、契約内容によって被災者の明暗が分かれた。

 同じ町内に住む中根信子さん(79)の自宅は木造2階建て延べ約180平方メートル。床上浸水1・1メートルの被害を受け、松崎さんと同様、大規模半壊と判定された。県の火災共済に入っていたが、水害は対象ではなかった。

 夫と2人暮らし。小さくても鉄骨で丈夫な家に建て替えることも考えたが、親類から「思い出の詰まった家。直せるなら直して」と言われて改修を選んだ。約1700万円かけて1階の床板と壁を取り換えた。生活再建支援金は改修のため150万円。共済は役に立たず、不足分は定期預金を解約して充てた。

 「小さな家だったら新築でも安かったかな。修繕できてよかったと思うけど、当時はどうしていいか分からなかった」

 生活再建を果たせず、この町を去った人も少なくない。

 被災者支援を続ける地元のNPO法人「茨城NPOセンター・コモンズ」が、地域を離れても気軽に立ち寄れるようにと昨年10月、

「えんがわカフェ」をオープンした。

 同NPOの横田能洋代表は指摘する。「浸水はハザードマップ通りだった。予想できたはずなのに」。行政も住民も情報を生かしきれなかった。(若林幹夫)

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