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井上しおりさん(右)宅の改修に用いた「荒壁」を説明する田村真一さん=播磨町南大中
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井上しおりさん(右)宅の改修に用いた「荒壁」を説明する田村真一さん=播磨町南大中

 入り母屋の瓦屋根に、焼き杉板の壁。昔ながらの落ち着いた雰囲気を漂わせる。兵庫県播磨町南大中にある古民家は2階建て延べ約260平方メートル、柱や鴨居のくすみが歳月を感じさせるが、2017年に耐震化の工事を終えた。

 「見た目もほとんど変わっていない。開放的な空間を維持できて良かった」

 築90年を超すこの家で生まれ育った井上しおりさん(50)は満足そうに語った。ここ数年は雨漏りがひどく、老朽化が気になっていた。簡易耐震診断の結果、耐力がほとんどないとされる評点「0・24」だった。自身も住宅メーカーに勤める建築士。「古民家の味わいを残したい」と考え、文化財の補修を多く手掛けてきた加古川市の1級建築士田村真一さん(45)に依頼した。

 1950年の建築基準法制定前に建てられた木造住宅は、現行法の建築物を対象とした一般的な診断では耐震性が低くなってしまう。一方、くぎなどの金具を使わずに柱とはりを組み合わせる工法は、振動に対して変形することで倒壊を防ぐ。「現代建築の耐震構造とは全くの別物」と説明する田村さんは、古い木造住宅の「揺れを吸収する」特性を生かした。

 柱1本ずつの太さや強度を調査。傷みが進んでいなかったためにそのまま残すことにした。柱と接する床の下15カ所には補強材を据え付け、壁は「荒壁」と呼ばれる紙を圧縮させた柔らかい素材にするなど振動を受け止めやすくした。さらに陶器製の瓦は軽い桟瓦にふき替え、安全とされる評点「1・0」に相当する耐震性を確保した。

 伝統工法に関する知識があり、古民家本来の耐力を計算できる建築士は限られる。一般的な耐震診断で評価される安全性を上げようとすると、建物を持ち上げてから柱と基礎を固定する大がかりな工事が必要になる。筋交いを入れた合板の壁を増やすと雰囲気が失われてしまう。田村さんは「費用も高額になり、解体、新築に流れがちになる」と指摘する。

     ◇

 江戸から昭和にかけての建物が残り、一帯が県の歴史的景観形成地区に指定されている高砂市高砂町も、取り壊される空き家が増えている。補修を経て2018年に公開が始まった「工楽松右衛門旧宅」やカフェに活用される建物が点在するが、このままでは魅力ある街並みを残せない。住民らが、古民家リノベーションの勉強会を重ねる。

 田村さんは改修に携わった加古川市の国登録有形文化財「大歳家」の見学会を開くなど古民家保全に力を注ぐ。「長年使われてきた家をつぶしてしまうのはもったいない。伝統的な工法の良さを残したまま、いかに補強するか検討してほしい」(小森有喜、若林幹夫)

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