コロナ禍の現場から~衆院選を前に~(1)<経済>早く「普通」に営業したい
2021/10/13 05:30
開店に向け、間仕切りが設けられたカウンターをアルコールで拭く藤沢大祐さん=加古川市平岡町新在家2
衆院選の19日公示、31日投開票が決まった。新型コロナウイルスは地域住民を疲弊させ、飲食店をはじめ、事業者を苦境に陥らせている。この国の行方を決める選挙を前に、兵庫県東播地域からコロナ禍の実情を伝える。
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「休業や短縮営業の協力金はいつまで出るのか」。感染拡大による4度目の緊急事態宣言が解除され、客足が戻り始めたJR東加古川駅前で、イタリア料理店「フォンタナベルデ」を営む藤沢大祐さん(47)は不安な表情を浮かべる。
これまで緊急事態宣言、まん延防止等重点措置のたびに店を休んだり、酒類提供を取りやめたりと協力してきた。料理のテークアウトなども始めたが、売り上げは2019年に比べて昨年は70%、今年は20~30%。「支援がなければ、店を閉めていた」と明かす。
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国は売り上げが急減した飲食店や小売店に持続化給付金などを支給。県も地方創生臨時交付金を活用し、今年1月からの休業や時短要請に応じた飲食店に、総額約1900億円の協力金を支出してきた。今回の宣言期間についても、店の規模や売り上げに応じて1日当たり4万~20万円を支払う。
総務省が発表した都道府県の20年度普通会計決算(速報値)は、国庫支出金を活用した大規模な事業者支援などで歳入、歳出とも過去最高。全国知事会は、衆院選の各党公約に、2兆円規模の交付金増額を盛り込むよう要請した。県の担当者は「国の財源がなければ、事業者支援は県独自では続けられない」と話す。
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県内で飲食店などを展開する「カノコ」(加古川市加古川町篠原町)も、今年の売り上げは19年の約25%で推移。店舗は間仕切りを設置し、客席同士の間隔を確保するなどしたため、仮に満席になっても売り上げは以前の半分程度になる。
対策として、JR加古川駅前で宴会の需要が高かった店舗はコンセプトを見直し。料理や酒類のグレードを上げ、単価アップを目指す。芳見達朗営業統括・管理室部長(61)は「給付金などで店の感染防止策は施せたが、国の財源不足による将来的な増税が心配。企業努力も必要だが、経済をどう活気づけるかを考えてほしい」と注文する。
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但陽信用金庫(本店・同市)による7~9月期の景気動向調査で、景況感を示す業況判断指数(DI)は、飲食店を含む東播地域のサービス業でマイナス32となり、6期連続のマイナス。DIは景気が「良い」とした企業の割合から、「悪い」と答えた割合を引いた数値で、次の10~12月期は、さらに8ポイントの悪化を見込む。担当者は「コロナ流行『第6波』への不安の表れではないか」とした。
飲食店は酒販や食品卸、おしぼり納入など関連業者も多い。藤沢さんは「店に関わる人たちのためにも、早く『普通』に営業したい」。政治には経済回復への道筋を示すことも望んでいる。(門田晋一)