衆院選・兵庫10区 私の争点 有権者の“生の声”(下)

2021/10/24 05:30

吉田一好さん

 衆院選が31日に投開票されるのを前に、新型コロナウイルス禍の実態や政治への要望など、有権者の“生の声”を2回にわたって紹介します。 関連ニュース 「2馬力選挙」巡り議論本格化 兵庫県知事選などで論点 来夏の参院選控え、公選法のあり方課題 健全な選挙のため法整備を 兵庫県議会が国に意見書提出 参政党が建築士の藤原氏擁立 次期参院選兵庫選挙区

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■認知症者支える議論を 「むすび(交流)の家」代表・吉田一好(よしだかずよし)さん(80)=加古川市
 認知症の人や家族らが集う、認知症カフェを開いています。毎月開いていましたが、新型コロナウイルスの感染対策で、今年の開催はまだ2回だけ。もし、クラスター(感染者集団)になれば、今後続けられなくなるかもしれませんしね。
 症状の進行を遅らせるためには、人との触れ合いも必要です。家族も悩みを打ち明け合って、ストレスを解消することが欠かせません。参加者には外出自粛が続いて、症状が進んだ人がいるようです。再び感染が広がれば、施設にいる家族と面会ができなくなるんじゃないか、という不安も残ります。
 厚生労働省の推計では2025年に、65歳以上の5人に1人が認知症になるそうです。政治には、症状の進行を防ぐため、通常の生活に戻るための道筋を示してもらいながら、これから増える認知症当事者や家族をどう支えるのかを考えてほしいです。(聞き手・門田晋一)

■子ども守る法整備必要 不登校の子らを支援する・藤田のりえ(ふじたのりえ)さん(71)=加古川市
 不登校の子の居場所や、子ども食堂を運営するNPO法人の代表をしていますが、不登校への対応や、子どもの居場所づくりが手薄だと感じています。先生によって対応が異なるケースも見聞きし、マニュアルが機能しているのかどうか疑問です。
 子どもの自殺は絶対に防がないといけない。虐待死もそうです。不幸があったときの「対応は適切だった」という行政の弁明も、もう耳にしたくない。法整備によって、子どもの健康や命を守ることはもっとできるはずです。
 新型コロナウイルス禍で、特にシングルマザーの仕事が減っています。お母さんたちは「自分が倒れたら、頼る先がない」といっぱいいっぱい。ストレスや貧困は、子どもに影響を及ぼしかねません。コロナ禍では一律給付よりも、困り具合に応じて、しんどい家庭に手厚く支援してほしい。(聞き手・広岡磨璃)

■産前産後の支援手厚く 4児の母、主婦・宮崎千春(みやざきちはる)さん(36)=稲美町
 1歳児から小学1年生まで、4人を育てています。選挙になると各政党が子育て支援策を掲げるけど、目立つのは「保育園の待機児童対策」と「お金のばらまき」くらい。疑問を感じます。
 保育園は増やせば、利用したい人も増える。近くの園もいっぱいで、妊娠中、一時保育が利用できませんでした。お金の給付は貯金に回りがちで、経済が回らないのではと感じます。
 男性も含め育休を充実させるとか、育児環境づくりはもっとできるはず。産前産後の育児が大変で妊娠出産をためらう友達が多いので、サポートが手厚ければ、少子化の解決につながるかもしれません。
 2年前、消費税増税で幼保無償化が実現したけど、関係ない人にはどう映ったかな。社会全体にバランスの取れた予算配分や支援策が、結果的には子育てしやすい社会につながると思います。(聞き手・広岡磨璃)

■苦しい人に支援届けて 航空機用素材加工などの会社シカタ社長・志方和久(しかたかずひさ)さん(68)=高砂市
 昨年、クルーズ船で新型コロナウイルスの感染者が相次いでいた頃、今の苦しい状況は全く想像できていなかった。
 2018年12月、航空機のエンジン部品加工の発注増を見込んで、3億円以上かけて工場を新設した。コロナ禍で飛行機が飛ばなくなって、発注量が7割減った。時短と一時帰休で対応したけれど、資金繰りが苦しくなった。だけど、社員ら52人の雇用は守っていかなきゃならない。
 ワクチン接種が進み、コロナ禍の収束を見据えた航空機の増産が欧米で予定されていて、少しほっとしている。日本国内でも検疫強化やワクチンパスポートの活用を通じて、国際社会との往来が元通り、盛んになるようにしてほしい。
 コロナで打撃を受けた業界は多いけれど、本当に苦しい人に国からの支援が届いていないんじゃないかな。努力した人が報われる。政治にはそんな社会を目指してほしい。(聞き手・笠原次郎)

 【特集ページ】衆院選2021

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