元大学教授監修の「手洗い絵本」 ミャンマー、タイ…アジア諸国でコロナ対策に一役 

2022/01/29 05:30

手洗いの大切さなどを解説した日本語の絵本(左)とバングラデシュ版を持つ山庄司志朗さん=加古川市平岡町新在家、日の出医療福祉グループ

 アジア諸国で広がる食中毒を防ぐために、兵庫県加古川市で一般社団法人の顧問を務める元大学教授が監修した「衛生絵本」が、現地で新型コロナウイルス感染対策に一役買っている。もともと、子どもたちに手洗いの大切さや正しい方法などを伝える内容で、ミャンマーやバングラデシュ、タイなどの言語に翻訳。感染拡大や軍事クーデターで渡航が難しくなる中、過去2年間で約5千冊を3カ国の学校や孤児院に贈り、手洗いの習慣化に貢献している。(門田晋一) 関連ニュース ミャンマー軍事クーデターから半年 日本から極秘に国軍関係者の逃亡を助ける男 園児のピアス、母国の風習でも駄目? 理解得られず入園辞退 遊牧民出身、14歳まで文字を知らなかった大学客員教授


 監修したのは、元静岡理工科大教授の山庄司(やましょうじ)志朗さん(71)=神戸市垂水区。2018年、保育園や介護施設を運営する一般社団法人「日の出医療福祉グループ」(加古川市)の顧問に就任した。同グループの保育園で、園児にせっけんで手を洗い、食品を十分に加熱することが食中毒を防ぐことを伝えるため、保育士や栄養士と絵本を制作。絵や簡単な言葉を使い、読み聞かせに活用している。
 一方で19年には、それまで研究で関わるなどしたアジアの劣悪な衛生環境を改善しようと、NPO法人を創設。東南アジアなどでは、水回りが不衛生な露店が多かったり、街中で排せつ物が垂れ流しになっていたりする地域も多い。文字を読めない人もいて、手洗いのマニュアルは普及しにくい。東南アジアと南アジアでは食中毒で毎年、約100万人が亡くなっている可能性があるという。そこで、絵本を現地の文化や風習に沿った内容にアレンジし、普及活動を始めた。
 ところが、20年にコロナの感染が拡大。渡航した上での活動は滞ったが、日本から絵本を送り、現地の非政府組織(NGO)のスタッフらが読み聞かせを代行。ミャンマーの僧院では、孤児たちが手洗いに励むようになり、感染防止に効果を発揮したという。21年2月には軍事クーデターが発生。活動は一時滞ったが、10月からは最大都市ヤンゴンで絵本を印刷し、クーデターの影響で失業中の日本語ガイドが小学校などに絵本のほか、マスクや消毒液を配った。
 バングラデシュでも、行動規制緩和後の昨年10月以降に普及が進んだ。タイでは、日本企業の関連会社も配布の協力に乗り出すなど、支援の輪は広がる。カンボジア向けにも、インターネットで公開している。
 オミクロン株が世界中で猛威を振るう中、山庄司さんは「これからも、衛生環境を改善する第一歩が手洗いだということを伝えていきたい」と話す。

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