東播磨地域の特産・大麦、豊岡の伝統工芸「城崎麦わら細工」に 大麦9万本分を納入へ
2022/07/30 05:30
小筋張りが美しいきり箱
東播磨地域の特産・大麦のわらが、兵庫県豊岡市の伝統工芸「城崎麦わら細工」の材料として使われることになった。JA兵庫南(本店・加古川市)で麦わらの活用に取り組む担当者が、職人から材料の調達に困っていると聞き、トントン拍子に話が進んだ。今年は3アールの収穫分(大麦9万本程度)を納入予定で、節間に切りそろえ、今夏中には出荷するという。(増井哲夫)
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同JAは2020年度、「大麦ストロープロジェクト」を立ち上げ、かつては廃棄していた大麦のわらを、プラスチックストローの代替品としたり、北欧の伝統工芸品の材料にしたりして有効活用する取り組みを進めている。
昨年9月、プロジェクト担当職員の高見香織さんが休暇で豊岡市の城崎温泉を訪問。「城崎麦わら細工振興協議会」の会長を務める神谷俊彰さん(56)の民芸店を訪ね、麦わら細工について話を聞いた。そこで分かったのが、材料調達に困っていた状況だった。
神谷さんによると、元々は麦わら帽子の生産で知られる岡山県からわらを仕入れていたが、帽子の原材料が輸入に切り替わり、同協議会が地元農家に頼んで麦を生産してもらっていた。しかし、湿度の高い豊岡の冬は麦栽培に不向きだった。農家の高齢化などもあって生産量は先細りになり、4アールあった作付面積は2アールにまで減っていたという。
そこで、高見さんがプロジェクトを紹介。「東播磨の麦わらを使ってみませんか?」と打診した。栽培している麦の品種が違うことから、取りあえずサンプルを送り、使えるかどうか判断してもらうことになった。その後、染色などを試した神谷さんから「使えそうだ」との返事があり、話がまとまった。
同JAは節間に切りそろえる作業を、農福連携で福祉事業所に委託。6月から作業を始め、3アール分を8月上旬ごろ同協議会に送る予定だ。神谷さんは「材料の安定供給は本当に助かる。できれば継続していきたいので、栽培品種などについて相談したい」。同JAの野村隆幸専務(62)は「歴史ある伝統工芸品に活用されることは誇らしい。東播磨の麦わらの可能性が、また一つ広がった」と喜ぶ。
【東播磨の大麦】東播磨7JAが合併して兵庫南となった1999年、収穫が梅雨の季節にかぶる小麦を、大麦に切り替えていくことに。当初は作付面積約100ヘクタール、500トンに満たない収穫量だったが、2020年度は稲美町や加古川市の435ヘクタールで1750トンを収穫。麦茶などに商品化されている。
【城崎の麦わら細工】江戸時代中期、因幡(鳥取県)から訪れた半七という湯治客が、竹笛に麦わらを貼り付けたことが始まりとされる。大麦の茎を色染めして切り開き、平らにして模様を貼っていく「模様物」、幾何学模様に貼っていく「小筋物」、ストロー状のものを編み込む「編組物」がある。