昭和初期に垂直飛行機開発「ヘリコプター」で特許権 発明家・大西唯次の軌跡知って 孫の女性が本出版

2022/09/18 05:30

発明家の祖父の生涯を本にまとめた岡田成子さん=神戸市垂水区

 兵庫県高砂市高砂町で飛行機に関する研究にいそしんだ発明家、大西唯次(ただじ)(1891~1963年)の生涯について文献や資料を基にまとめた本を、孫の岡田成子(しげこ)さん(71)=神戸市垂水区=が出版した。現在のヘリコプターに相当する「垂直飛行機」などさまざまな発明に取り組んだが、敗戦などにより実用化されなかった。岡田さんは「常に新しいことに挑戦し続けた祖父の思いを知ってほしい」と話す。(増井哲夫) 関連ニュース 終戦前日の海戦で艦撃沈 現れた年配の漁師たち、355人の命救う 「空飛ぶ船」国内唯一のメーカー 飛行機づくりの灯ともし続けた100年 大泉洋さんを直接説得、その結果… 売れっ子小説家・塩田武士氏、メディアミックスを語る


 本は「昭和五年 私はヘリコプターを発明した~大西唯次の軌跡」(神戸新聞総合出版センター)。
 唯次は若い頃から飛行機に関心を持ち、模型飛行機を作って数々の大会で優勝した。1914(大正3)年に高砂町で時計店を開いてからも研究熱は冷めず、スクーターやプロペラ式自動車などを次々に製作した。垂直飛行機の開発に成功し、29(昭和4)年に特許を出願。神戸新聞をはじめ各紙に「世界的大発明」などと紹介された。
 30年に特許が受理され、35年には「ヘリコプター」という名称で特許権を獲得。ところが、軍はヘリコプターの本格的開発を見送り、当時の海軍航空本部技術部長だった山本五十六からは「軍用としては疑問だが、研究を続けてください」との年賀状が寄せられたという。結局、敗戦により、唯次の発明が実用化されることはなかった。
 岡田さんはかねて、祖父の成したことや人生を多くの人に伝えたいと考えており、昨年10月、ついに自らがまとめた本の出版を決意。唯次について記した本の著者に連絡を取って引用などの許可を得た。また資料は、講演会やテレビで唯次について紹介した次男道一さん(2020年11月死去)や、岡田さんの姉の西脇真知子さん(73)=加古川市=らに提供してもらった。
 回想録では、唯次の四女湯尾明子さん(85)、孫の岡田さんや西脇さんが思い出を語っている。
 唯次は孫たちに、新しいことに挑戦するよう伝え続けた。本にまとめ、祖父の一生を振り返った岡田さんは「発明が結実せず、悔しさもあっただろうが、やりたいことを見つけ、全力で取り組んだ人生はきっとすばらしかったに違いない」と語った。
 本は加古川、高砂市立図書館などに寄贈。今後、希望者への販売も検討している。問い合わせはメール(littlejiants@zeus.eonet.ne.jp)で。

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