おしゃれに行けないなら「こちらから行きます」 加古川のヘアサロンオーナー、トラック改装で「移動美容室」

2022/10/26 05:30

「美容室を訪れるのが難しい人の元に駆け付けます」と意気込む、安大陽平さんと酒井亜也子さん=加古川市加古川町北在家

 障害者や要介護者をはじめ、さまざまな理由で美容室に行くのが難しい人の元へ駆け付けます-。兵庫県加古川市加古川町のヘアサロン「ティーダ」オーナーでスタイリストの安大(あんだい)陽平さん(43)が、トラックを改装して「移動美容室」を造った。4月から高齢者宅や施設などを訪問し、美容を諦めていた人たちのおしゃれをサポートしている。(増井哲夫) 関連ニュース 【写真】移動美容室の車内。シャンプー台からは温水が出て、換気設備もある 外出できない若い世代も 25歳美容師、訪問カットにやりがい 美容師「普段ワックスつけますか?」→この質問の意味って?SNSが驚き「今度からハッキリ言うわ」


 美容師歴25年の安大さん。常連客が高齢になり、「店まで行くのがしんどい」といった声を聞くようになった。また、障害があって美容室で施術を受けるのが難しかったり、育児と介護で店まで出向けなかったりする人もたくさんいた。
 「ならばこちらから行けばいい」と、訪問理美容に取り組んだが、民家での施術ではできることが限られ、後片付けも大変だった。そこで移動美容室を造ろうと一念発起し、箱形荷台の1・3トントラックを購入。試行錯誤しつつ改造を重ね、昨年10月、移動美容室「KIRI ni ICCO CAR(きりにいこっカー)」が完成した。
 温水にできる100リットルのシャワー用タンクを備え、外部水源につなぐことも可能。車内に専用の車いすで移動すれば、そのままシャンプーチェアになる。寝たきりの状態でカットできる設備も用意した。
 準備を進めていた頃、頼もしい助っ人も現れた。スタッフの酒井亜也子さん(50)=加古川市=だ。勤めていた美容室がコロナ禍で閉店。「訪問美容をやりたい」と考えていたところ、安大さんのインスタグラムを見つけ、移動美容室のことを知った。介護職員初任者研修を受ける一方、訪問福祉理美容師の資格も取り、今年5月に就職した。
 移動美容室は安大さんと酒井さんが担う。介護が必要な人の自宅へ出向いたり、高齢者施設を訪問したり。コロナ禍で美容師を施設内に入れるのが難しかったこともあり、関係者から「本当に助かる」との声が寄せられるという。
 依頼は高齢者だけではない。9月下旬には発達障害がある10代女子の母親から相談があった。知らない人が大勢いる美容室は難しいと、ずっと母親が風呂場で髪を切っていたという。遊びに行く感覚で訪れ、打ち解けたところで移動美容室へ。カットをすると、母娘とも喜んだという。
 「自分が店を抜けてこの活動ができるのは、信頼できるスタッフがいるから。感謝している」と安大さん。「いろんな事情を抱えて美容を遠慮している人は、たくさんいるはず。少しでもお役に立てれば」と話した。
 一般料金はカット(シャンプー、ブロー)3850円、パーマ(カット、シャンプー、ブロー)8800円など。出張料金は加古川市内は無料、同県高砂市と稲美、播磨町は千円、神戸市西区と三木、小野市は2千円。訪問美容のスタッフも募集している。ティーダTEL079・425・5650(月曜定休)

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