釧路地裁に入る桂田精一被告=12日午前9時31分
 釧路地裁に入る桂田精一被告=12日午前9時31分

 北海道・知床半島沖で2022年4月、乗客乗員計26人が死亡、行方不明となった観光船沈没事故で、業務上過失致死罪に問われた運航会社社長桂田精一被告(62)は12日、釧路地裁(水越壮夫裁判長)の初公判で「(事故の)当日朝、船長から『海が荒れる前に引き返す』と伝えられ、出航を了解した」と述べた。弁護人は「沈没を予見することはできなかった」として起訴内容を否認し、無罪を主張した。

 冒頭陳述で検察側は「強風・波浪注意報が発表され、船が沈没する恐れがあったことを予見できた」とし、注意義務違反が認められると主張。

 弁護側は、被告は必要な気象・海象情報を収集したが「出航を中止しなければならない風速や波高を超えるものではなかった」と強調。「船の沈没はハッチの機能不全によって生じた」とし、法律に基づく検査で見過ごされ予見できなかったと訴えた。

 桂田被告は罪状認否で、乗客乗員の家族に謝罪する一方「罪が成立するかどうか分からない」と語った。