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 結婚に関するハウツーは、いたるところに転がっている。そういう本もたくさん出版されている。あるいは結婚なんてしなくていいという主張もたくさん。そんな中で「結婚」をテーマに本を書いてほしいと依頼された著者は、いったい何を書いたらいいものかと悩む。「読んだら絶対結婚したくなくなる本」ならどうだろう? と思いつき、まずはかつて自分が経験した離婚について書くところから始めることに。

 29年間連れ添った女性のもとを飛び出した著者。それまでも複数の浮気相手とのセックス、そして度を超したギャンブルで朝帰りすることもしばしばで、決して上手くいっていた夫婦ではなかった。しかし長く一緒に暮らしてきたことによる「情」があり、離婚を考えたことは一度もなかった。

「他に好きな人ができた」。突然家を出たのはシンプルに言えばそういう理由だ。もちろんその後はシンプルになんて行かなくて、かなりのゴタゴタに見舞われる。やっぱり離婚というものは大変なのだなあということであるのだが、結果的にこの離婚の部分は、本書において序章的な位置に留まった。

 本当に大変なのは、新たに一緒に暮らし始めた女性との、二度目の結婚生活の方であった。お互いに「嘘がない」状態で向き合って暮らしていく困難。理解できない他者と感情をぶつけ合う苦痛。しかし数多の危機を切り抜けた著者は、その関係にしか存在し得ない豊かさと、男としての本性のようなものに目を開いていく。

「嘘がない」関係や「まず相手のことを最優先に考える」、「自意識の束縛からの解放」が必要などなど、ここに著者が見出したことだけを取り出すと、既存の本に載っているハウツーと似たものになってしまうかもしれない。しかし読み味というか言葉が身体に染み渡っていく具合はまるで違う。

 人柄の成せる業と言ってしまうのは簡単だけれども、二度目の結婚生活を通して著者が知ることになった他者との向き合い方と、文章のスタイルが私にはぴったりと重なって見えた。つまり「嘘がない」のだ。

「読んだら絶対結婚したくなくなる本」をイメージして書かれた本書は結果的に、読むと結婚は素晴らしいものだと思える本になっている。

(平凡社 1400円+税)=日野淳

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