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 ここまで書いていいんですかと、こちらが少々心配になった。松竹映画の撮影所で長年、助監督を務めてきた著者が、現場で会った俳優や監督約50人についての思い出を率直につづった。

 「率直に」というのがミソで、この種のコラムは登場人物への賛辞や自慢話に終始しがちだが、著者は「毒舌家」を自称するだけあって、大監督、大俳優にも辛口の人物評を遠慮会釈なくつづっている。

 田中邦衛は極め付けのケチ。津川雅彦は音痴。中野良子はわがままで生意気。森本レオは台本をろくに覚えない。山田洋次監督に至っては、撮影現場で怒鳴りまくる、子役相手に声を荒げる、最近の俳優について無知、ジョークがヘタ、テストを何度も繰り返す「ぐずな人」……と言いたい放題だ。

 しかしなのか、だからなのか、著者は今も山田組の主柱として監督はじめスタッフや役者から頼られている。ここに助監督という裏方の奥深さがあるのかもしれない。

 と言っても、本書の真価は有名人の毀誉褒貶ではなく、撮影現場の雰囲気を実に生き生きと伝えている点にある。

 山田組に初めて入る役者はガチガチに緊張している。逆に誰からも何も言われなくなった大御所俳優は監督からのダメ出しを待っている。セットの隅で泣いている女優もいれば、女王のように振る舞っている女優もいる。

 その間に入って助監督はおだてたり、なだめたり、アドバイスしたり。映画にまさるとも劣らぬ人間ドラマの観察記録である。タイトルに偽りなし。

(言視舎 1600円+税)=片岡義博

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