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 医師と病院と医療のリアルな姿をどうしたら伝えられるか。病理医の著者が取ったのは、編集者とのやりとりで本書ができあがる過程を読者に開示するという意表を突く方法だ。

 「ゆるくて、おもしろい医療エッセー」の執筆依頼が編集者から舞い込んだ。でも医療現場は決してゆるくはない。著者は書きあぐねる。ところが編集者から各章、各節の見出しが提案された途端、「受注体質」の著者の筆は一気に進む。「医療ドラマとリアルの違い、とは?」「医者の世界は旧態依然?」「やってられるか!と思う瞬間」などなど。

 意外だったのは、名医と平凡な医師の治療結果には差がないという指摘だ。医師はエビデンスに基づく「標準治療」を行うからだという。差があるとすれば人柄。ならば、じっくり患者の話を聞いてくれる町医者のほうが大学病院よりも良さそうだ。

 終盤から怒涛の展開を見せる。医療をシアターに見立て、患者は主演俳優、病気は悪役として医師や看護師も出演する群像劇として描いていく。

 現代の名悪役「がん」は徒党を組んで攻めてくる。医師は敵軍の配置を調べ、自軍の戦力を推し測り、看護師や検査技師らとともに迎え撃つ。司令官たる医師も一共演者にすぎない。患者は自分を含むユニット全体を信頼することで理想的なチーム医療が実現する--。

 さて本書刊行も一つのシアターとして示された。読者の私もレビューを読むあなたも群像劇の一役者だ。これって本と読者の理想的関係かもしれない。

(大和書房 1500円+税)=片岡義博

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