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 「世界には、生きたくても生きられない人がいるからです」。

 子どものころに、何度か聞いた言葉。どうして自殺をしてはいけないの?っていう質問に対する答えだった。でも仮にさ、「生きたくても生きられない人」が1億人いるとしてさ、一方で私が死にたくてたまらない人だとするじゃん。で、その生きたい1億人が、「じゃあ代わりにそのお命頂戴したい」って挙手するとするでしょ。で、神様かなんかに申し出て、じゃトライアルで各1時間ずつ、死にたくてたまらない人の人生をお試しくださいって言うのね神様が。で、1億時間経過して、生きたいって言ってた1億人が私の人生試した結果、「あ、そういう人生だったら結構です」って、全員手を下ろしやがった。そしたら死にたくてたまらない私は死んでもいいんですかね、ダメですかね。一応言っておきますけど、死にたいとかじゃ断じてないのでご安心を。今月宮古島行くし。わーい!

 なんでこんなことを思ったかというと、たかのてるこの新刊を読んだから。今から約20年前、紀行エッセー「ガンジス河でバタフライ」で一躍脚光を浴びたたかの。現在は「地球の広報・旅人・エッセイスト」として活動しているそう。地球の広……頼もしいですね。

 たかのの新刊は、前作「生きるって、なに?」同様、文章と写真で構成されている。文章は対話の形を取っていて、質問と答えが数珠繋ぎに続き、ひとつの世界が完成されている。「生きるって、なに?」という、前作の書名問いから始まる本書。逃げてもいいから生き延びること、その大切さを伝えている。「自分自身の一番の理解者になる」、「自分を責めない」「いい意味で開き直る」「たくさんの人と仲良くすることよりも/大事なのは自分自身と仲良くすること」「自分の心の欲する場所へ」……。

 子供にもわかるようなその言葉は、読んでいてとても気持ちがいい。ま、親のセックスを思い浮かべてゾワッと照れる瞬間や、「今いる場所が心が折れるぐらい苦しければ/置かれた場所で咲かなくていいから/逃げてもいい」という言葉を読んだ瞬間は頭の中にノートルダムの鐘の音が鳴り響きましたが。

 今の、この瞬間のわたしには、とても気持ちのいい、きれいな水が体の中を流れるような体験でした。わたしは、わたし以外の誰でもないから、もちろんたかのさんでもないから、「生きのびろ!」とは言えない。一日中叫び続けるほどの痛みに苦しむ人に「本当に本当に本当につらいから生きるのやめていい?」って聞かれて「生きのびろ」って言う自信はない。逆の立場だったら「もう無理やめる」って言うような気がするし。わたしの苦しみはわたしだけのもので、あの人のはあの人のだけだから。1時間ずつトライアルはできないから、生きることと死ぬことは、これからも考え続けて生きたいなって思いました。

(テルブックス500円+税)=アリー・マントワネット

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