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 自分を見失うくらい動揺していたり、周りが見えないくらい舞い上がったりしている友がいたら、この本を手渡して言おう。まぁ落ち着け。ゆっくりページをめくってみてほしい。

 熱量ゼロというか、明鏡止水の境地というか、ローテンションでこそ冴え渡る観察眼と、産毛のように微細な感受性でとらえた戸惑い、違和感、おかしみ、哀しみ、自嘲を404句の自由律俳句と50編のエッセー、70枚のモノクロ写真ですくい取った。

「よく振ってお飲みくださいをしっかりと守っている」(せきしろ)

「担任の私服におびえる」(又吉直樹)

「武士の格好をしたガイドと歩く」(せきしろ)

「この話し方の店員からは買わない」(又吉直樹)

 お笑いと文学を持ち場とする2人による句集は『カキフライが無いなら来なかった』『まさかジープで来るとは』に続いて10年ぶり、第3弾となる。スタイルは変わらないが、『カキフライ-』の写真は不思議な看板や標識が多かったのに対し、この『蕎麦湯-』では無人のグラウンドや水面に浮かんだ花びらなど乾いた叙情に傾いている。

「あるある」感にあふれていた句の作風は作為が薄まり、より力が抜けているように感じる。世間とうまくなじめなかった2人の心境の変化によるものだろうか。それを「老成」と呼ぶか「成熟」と呼ぶかは好みによるだろう。

 俯瞰でとらえた世界と自分との微妙なズレにハッとさせられ、クスッと笑わせられる。気がつくと、なぜか気持ちがゆったりしている。

(マガジンハウス 1400円+税)=片岡義博

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