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 そうだったのかぁ。そうだったんだ…。アートの世界を変えた!という現代美術の名作を見ても、正直ピンとこなかったのだ。ところが読み進むうちに、そのスゴさが明確な輪郭をもって浮かび上がってくる。まるで上質なミステリーを読むようにスリリングな体験だ。

 著者は子ども向けのワークショップを企画する中学・高校の美術科教師。紙上で体験型の授業が展開する。「自画像を描いてみましょう」「さて、ここで質問です」「答えを聞いて、みなさんはどう感じましたか」。語り口はやさしいが、中身は深く手ごわい。

 レッスン1。妻を描いた肖像画で鼻筋を緑色に描いたり太い輪郭線を引いたりしたマティスが「20世紀のアートを切り開いたアーティスト」と言われるのはなぜか?

 絵画の使命は長らく「目に映る通りに世界を描くこと」だった。だが20世紀、カメラの普及によって「写実」という目的が消失する。マティスは「目に映る通りに世界を描く」という絵画の常識に決別を宣言したのだ。

 時代を画したアーティストがどんな常識からアートを解放したかが次々に明らかにされる。ピカソは「遠近法的なものの見方」から、カンディンスキーは「具象物を描くこと」から、デュシャンは「目で見て美しいもの」から、ポロックは「イメージを映し出すためのもの」から、そしてウォーホルは「アートという枠組みそれ自体」から。

 だがこれは美術史の授業ではない。世界を変えた美術の鑑賞を通して「アート思考」、すなわち自分だけの見方で世界を見つめ、自分なりの答えを生み出すための思考法を身につけるためのレッスン。従来の常識がどんどん覆る現代を生き抜くためのトレーニングだ。読む前に紙と筆記用具の用意を勧める。

(ダイヤモンド社 1800円+税)=片岡義博

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