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 「当事者研究」という言葉は耳にしながら何をするのかよく知らなかった。当事者が集まって互いの力を借りながら日常の悩みや困りごとを研究する。もともと統合失調症の自助活動から始まり、依存症や発達障害などの当事者に広がって、最近は単に困りごとを抱えた人たちが始めているという。

 そして子育てに困っている6人のお母さんが集まった。本書には彼女たちの当事者研究の実況記録が収録されている。

自己紹介の後、進行役が留意点を説明する。研究の目的は自分の言動や考え方の癖、心の傷を発見することなので「研究テーマは自分に関係することなら何でもいい」「犯人探しはしない」「解決ではなく共有を目指す」。6人が自分の研究テーマをそれぞれ決めて発表後、2人1組で「苦労したエピソード」を語り合う。

 「子どものことを待てない」を研究テーマに選んだ女性は「自分の父親がせっかちだった」と語りだす。父親同様、自分も頑張る人生を歩んできた。だから息子が頑張っているように見えない時に「頑張れ」「早くして」と怒ってしまう。幼い頃の自分は実はイライラを溜めていて、本当は父に怒りをぶつけたかったのかも……。

 6人6様の困難と経験があり、ドラマがある。身近な子育ての悩みの底に例えば自分の親との関係や幼少時の体験が横たわっている。方法論に沿って語ること、聴くこと、発表することでそれがあぶり出され、読んでいるこちらも気づきと発見の場にいざなわれる。

 当事者研究は1対1の面接の限界から生まれた技法だという。語ることも聴くことも、実はそう簡単なことではない。そこでグループ作業のダイナミズムが威力を発揮し、自己発見と共感という果実をもたらす。これは入門編。困りごとを抱えたさまざまな現場に応用できる試みだ。

(ジャパンマシニスト社 1600円+税)=片岡義博

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