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 「文法はエンタメだ」と著者は記す。「めちゃくちゃ面白い」そうだ。本当かな、と思いながら読み始めた。

 学校で習う文法とは、古文(文語)を理解するために「超実用的」に作られており、現代語の文法は古文から流用された「おまけ」みたいなものだという。

 著者は文体論、テクスト言語学が専門。本書の前半は学校文法を出発点に、文とは何かを解き明かす。「一つのまとまった意味や考え(思想)を表している言葉のひとつづき」を文といい、文が組み合わさって文章になる。学校では主語と述語が文の根幹と習うが、著者は「文の根幹は『主語+述語』ではなく、『述語』」、さらに「『文』にとってもっとも重要なものは述語」と主張する。さて、どういうことか。

 ここで例示されるのは「ビーグル!」という単語一つだけでできた「一語文」。街角でビーグル犬を見かけた時に発したり、好きな犬を聞かれて「ビーグル」と一語だけで答えたりすることもあり、これらは立派な文として通用する。つまり文であるためには「何かを述べたてること」、言い換えると「主観的に意味や考えをまとめ上げ、伝達すること」が必要だという。主観、すなわち話者の希望や推測を表すものは「モダリティ」と呼ばれ、このモダリティこそが文を成立させると著者は言う。

 主観を言語化するのは人間の本質的な営みであり、文を考察することは人間の思考を探求することになる。文法と人間を結びつける本書では、太宰治の長文がなぜ読みやすいかを分析した「複雑な『文』の作り方」の章も興味深かった。

 著者はさらに生成文法や認知言語学の入口を見せてくれる。こちらは正直言って、馴染みのない身がエンタメと感じるには時間がかかりそうだが、言葉についてこんなに考え抜く人たちがいるのは、やはり面白い。

(光文社新書 840円+税)=杉本新

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