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 2025年大阪・関西万博の会場整備費が500億円増え、最大で2350億円になると運営主体の日本国際博覧会協会が政府や大阪府などに報告した。増額は2度目で、当初の想定の2倍近くに膨れ上がる。

 協会側は、資材価格や人件費の高騰といった近年の外部環境の変化を要因に挙げる。しかし、同じ環境下で行われている民間の事業が、建設費を倍増させているわけではない。コスト削減の努力をどれだけ重ねたのか疑問を抱く。

 整備費は政府や大阪府・大阪市、経済界が3分の1ずつ負担する。血税を投じる以上は国民の納得を得るため説明を尽くす必要がある。これ以上の増額を招かないよう、計画全体も徹底的に見直さねばならない。

 開催準備を巡っては、協会の調整力に疑問符が付く。パビリオン建設で国内業者との交渉が進んでいない参加国が多いのはその典型だ。

 財政事情を理由にメキシコとエストニアは参加を辞退した。コスト上昇や業者が決まらないなどで、辞退が続く可能性は否めない。

 あらかじめ建てた施設を複数国で共有するなど、参加国の負担を減らす方法を協会が提案したのは今年夏だ。各国の状況を把握し、もっと早く手を打つべきだった。

 25年4月の万博開幕まで1年半を切っている。建設業界は24年4月の残業規制強化で人手不足が深刻化する。会場の夢洲(ゆめしま)は人工島で、アクセス道路は限られる。府が運営業者と実施協定を結んだ統合型リゾート施設(IR)の工事も本格化するため、万博の工事にも影響しそうだ。

 協会任せにせず、政府や府市も連携を強めて対策を講じなければ、開幕までに工事は到底間に合わないのではないか。

 一方で市民の間に万博への期待が高まっているとは言い難く、開催に否定的な見方も強まっている。

 建設費の上振れが公表された後の11月3~5日に共同通信が行った世論調査では、万博開催を「不要」とする回答が全体の7割弱に達した。 吉村洋文大阪府知事が共同代表を務める日本維新の会は、万博誘致を目玉政策に掲げてきた。ところが世論調査では、維新の支持者でも65%が万博を「不要」と答えている。巨額を費やすだけの意義がどこにあるかを見いだせないからだろう。

 今回の万博は、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げる。状況の変化に応じて施策の内容を見直し、環境や将来世代に与える負担が少ない手だてを探る柔軟さが、未来社会には不可欠と言える。

 そのモデルとなるためにも、万博の日程や内容について、官民で考え直さねばならない。