学校の先生たちから「悲鳴」が上がっている。危機的とも言える教育現場の状況に、社会がもっと目を向ける必要がある。
文部科学省が2023年12月に公表した調査によると、全国の公立小中高校と特別支援学校で22年度に精神疾患を理由に休職した教員は、過去最多の6539人だった。このうち約2割に当たる1270人は、23年4月1日時点で退職していた。
精神疾患で1カ月以上の病気休暇を取った人を含めると1万2192人に上り、2年連続で1万人を超えた。若手の教員ほど精神疾患で休む割合が高かった。
業務の多忙化が主な要因と考えられる。文科省の別の調査では、過労死ラインとされる月80時間超の残業に相当する学校内勤務時間の教員は、22年度に小学校で14・2%、中学校では36・6%を占めた。
過酷な勤務状況が、教員志望者の減少や、休職や退職者で生じた欠員を埋められない「教員不足」などの悪循環を招いている。兵庫県内でも、必要な教員が確保できず授業に支障が出る事態が起きている。子どもへの影響は無視できない。
文科省は、学校行事の見直しや部活動の地域移行、教員の事務作業軽減といった働き方改革に取り組みつつある。それらの重要性は否定しないが、「焼け石に水」と言わざるを得ない。
公教育の質を保ち、高める努力をするのは国の責務である。教員が子どもと向き合い、やりがいを持って本来の業務に当たれるよう、思い切った施策が求められる。教員の定数増や学習量のスリム化などを正面から議論するべきだ。
08年の学習指導要領改定で「脱ゆとり教育」にかじを切って以来、学習内容はどんどん増えている。加えて、子どもへの教育的配慮のニーズは多様化している。業務が拡大する一方、公立小中学校の教員数はほぼ横ばいである。現場が疲弊するのも無理はなかろう。
待遇改善も急務である。公立学校の教員には、残業代を払う代わりに月給4%分の教職調整額が一律支給されている。実態と見合わず、「定額働かせ放題」との批判がある。文科省は増額を検討中だが、業務量の適正化とセットで進めてほしい。
学校、家庭、地域の3者がそれぞれどのような役割を担うかを、社会全体で考えることも重要だ。「公園で遊ぶ小学生がうるさい」などの学校と直接関係のない要望や相談が寄せられ、教員の業務が肥大化している現状がある。
子どもたちの生きる力を育むという観点からも、学校を軸にした連携の輪を地域で広げていきたい。
























