兵庫の土砂災害、7カ所は警戒区域外 西日本豪雨
2018/08/06 06:21
警戒区域外で起きた土砂崩れ。ブルーシートに覆われた斜面から、隣接する民家へ土砂が流れ込んだ=7月24日、神戸市長田区上池田3
西日本豪雨で、土砂流出による家屋損壊など人命に危険があると認められた兵庫県内55カ所の被害のうち、7カ所は土砂災害防止法の「警戒区域」に含まれていなかったことが県砂防課への取材で分かった。区域指定について県は2014年度にほぼ完了したとしていた。同年の丹波豪雨後に行った区域の総点検で古い資料を基にし、指定から漏れたとみられる場所もあった。(小川 晶)
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県砂防課によると、55カ所は県内41市町のうち19市町に及び、急傾斜地の崩壊41カ所、土石流11カ所、地滑り3カ所。警戒区域から外れていたのは、急傾斜地の崩壊が5カ所(神戸市4、姫路市)、土石流と地滑り各1カ所(宍粟市、神戸市)で、いずれも死傷者はなかった。
警戒区域に指定されていなかった7カ所のうち、土石流で民家が全壊した宍粟市波賀町谷は、同法の基準を満たしていなかった。林道沿いの雨水が渓流に注ぎ込み、水量が想定を超えたのが原因という。
一方、急傾斜地の崩壊で民家が損壊した神戸市垂水区潮見が丘1と同市長田区上池田3は、指定基準を満たす可能性があったが、同課は人の居住を確認していなかった。
県は、06~14年度に区域指定する際、航空写真などを組み合わせた02~04年度時点の「砂防基盤図」を使用。地元住民への取材では、同市垂水区と長田区の2カ所は05~08年ごろに宅地造成されたといい、調査対象から外れていたとみられる。
県は14年度、8月の丹波豪雨を受け、危険箇所を改めて確認する「総点検」を実施した。しかし、「基盤図を02~04年度時点から更新できておらず、指定漏れを把握できなかった可能性がある」(同課)という。
長田区上池田3では空き地の斜面の土砂が流出し、民家の外壁などを損傷した。住人の根来真幾子さん(42)は「地盤が固いと聞いていたので、土砂災害は思いもよらず、避難情報なども気にしていなかった」と振り返る。
県は危険度のより高い「特別警戒区域」の指定作業を本格化させており、更新された基盤図を使った作業を各地で進める。同課の担当者は「警戒区域外の被災7カ所を含め、危険箇所を見直し、周知に役立てたい」と話す。
【土砂災害警戒区域、特別警戒区域】危険の周知や避難体制の整備などを目的とした土砂災害防止法に基づき、都道府県が指定する。警戒区域は、急傾斜地の崩壊▽土石流▽地滑り-の3種類に分かれ、傾斜度や高さなどの基準に従ってそれぞれ指定。危険度がより高い箇所は特別警戒区域となり、宅地などの開発に一定の規制がかかる。兵庫県内の警戒区域は2万889カ所、特別警戒区域は4745カ所(7月末時点)。
■避難勧告範囲の決定難しく■
土砂災害の危険性が高いとして法律に基づき指定する「警戒区域」。避難勧告などの発令基準とする自治体も増えており、防災担当者は情報伝達に頭を悩ませる。
神戸市は、広島土砂災害のあった2014年以降、広く早く市民に危険を伝えようと、警戒区域を基準に避難勧告などを発令するようになった。西日本豪雨ではこうした対応をとったが、指定外の5カ所で家屋が損壊するなどした。
市危機管理室によると、六甲山系が市域をまたがり、区域外の危険箇所を個別に洗い出すのは難しいという。「緊急速報メールや防災行政無線の情報を活用し、区域外でも臨機応変に行動できるよう市民への周知を図る」と担当者。
芦屋市も西日本豪雨での避難勧告などの対応に警戒区域を基準とした。「区域への啓発はマストで、それ以外の地区の意識をいかに高めるかが大切」とする。
一方、土砂崩れによる死者が出た宍粟市は、市域全体や旧町単位で避難情報を流した。担当者は「谷あいの集落が多く、『区域外だから安全』とは言えない」と説明する。
(小川 晶)