土石流5時間前に「前兆」 神戸市、避難指示出さず
2018/08/06 12:38
土石流が発生する前に道路を茶色い水が流れた=6日午後3時35分、神戸市灘区篠原台(住民提供)
西日本豪雨によって6日夜に土石流が起きた神戸市灘区篠原台。同日午後にも同じ場所から住宅街に土砂が流れ込んでいたことが30日、関係者への取材で分かった。同市は夕方までに土のうを積むなどしたが、前兆現象とは判断せず、同地区の土砂災害警戒区域を対象とした避難勧告を指示に引き上げることはしなかった。自宅にとどまった住民も多く、結果的に逃げ遅れた50人以上が消防隊員によって救助された。(若林幹夫)
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市消防局によると、6日午後3時15分ごろ、「住宅街に水が流れ出している」との119番があり、消防隊員が駆けつけると山側の一角で泥や石混じりの水が流れ出していた。民家に入るのを防ぐために土のうを積み、夕方には流出が収まったという。避難勧告が出ていたこともあり、あらためて住民らに強く退避を求めることはなかった。
土石流の発生は、通報が集中した6日午後8時半ごろとみられる。崩落現場は住宅街の北側約200メートルの斜面。日中の土砂流出と同じ場所から大量の泥や倒木が住宅街に流れ込んだ。急行した消防隊員が1軒ずつ回って避難誘導し、灘消防署が緊急判断として避難指示に切り替えた。玄関口や1階が泥で埋まって出られなくなった住民も多く、7日夕方にかけて53人が救助された。
市地域防災計画によると、避難勧告より強い避難指示の発令について、記録的短時間大雨情報の発表時などのほか「土砂移動現象などの前兆現象を確認し、危険と判断し、より強く避難を促す必要がある場合」と規定する。同消防署は「日中の土砂は『道路溢水(いっすい)(道路にあふれた水)』として扱い、対応は完了したと判断したが、前兆だったことは否定できない」と説明する。
市災害警戒本部は6日午後4時ごろに、市消防局を通じて状況を把握したが、土砂崩れとしては報告されず、人的被害もなかったため、避難指示への切り替えは検討されなかった。市危機管理室は「消防の現場判断に任せていた」とし、今回の対応について今後検証するという。