元アパレル経営者(上)あっ、会社なくなる

2020/07/15 14:40

会社がつぶれる

 コロナの影響で、18年間やってきたアパレル会社がつぶれました。負債は1億円を超えます。個人としても破産の手続きを進めることになります。

 30~60代ぐらいをターゲットにした婦人服や小物のセレクトショップを展開していました。最後は神戸・元町や大阪に店舗があって、ネットショップも手掛けていました。
 会社を始めたのは22歳です。1人で元町にかばん販売の店を出しました。そうですねぇ、軌道に乗ったのは2、3年後ですかね。法人化して、人通りの多い場所に店を移転したり、店舗を増やしたり。服や小物を扱うようになったのもこの頃です。
 調子のいい時期は売り上げが年間2億円ちょいありましたよ。商品が支持され、次から次に売れていく。商品が足りない状態。そんな感じでしたね。
 国内外いろんなところから仕入れたし、自社でデザインして海外の工場で製品を作ったりもしました。いくつかある店舗の中でも神戸の店は繁華街にあって、売り上げが一番多かった。親子で来てくれるお客さんもいました。
 コロナの影響が出始めたのは1月末からです。商品の入荷が遅れ始めました。婦人服業界って、90%が中国とかアジア系に頼ってるんです。メード・イン・ジャパンとか言っても、ボタンや生地が中国製とか。まずは中国からの出荷がストップし、2月に入ると仕入れがパタッと止まりました。店は開けてましたが、雲行きが怪しいなぁと。
 例年、1月下旬には春物を店に並べます。でも今年は用意できないので、去年の余りとかメーカーの在庫商品とかで回しました。
 そうこうしていると、次は韓国の工場が完全にストップしましたね。
 大阪にあった店、クラスターが発生したライブハウスの近くやったんです。店は開けてましたが、誰も来ませんよ。ただ売り上げはなくても、経費はかかる。
 3月上旬、売り上げが急減した事業者を支援する貸付制度ができるって報道で知りました。すぐに税理士集めて資料作って、政府系金融機関に持って行きました。少しでも早く融資を受けたかった。
 でも面接で、男性の職員に言われたんです。「アパレルが苦しいのはコロナじゃないですよね。暖冬の影響ですよね」って。
 実は年末、ひどい暖冬で冬物が売れず、先を見通して金融機関と協議の上、融資の返済をストップしました。計画通りだったのに、そこにコロナです。だから事前に経済産業省に電話して「うちにも適用されますか?」って聞いたら「今回は信用状況に関係なく対応します」って言われたんです。だから申請したのに…。
 4月上旬、担当者から電話があり「融資できない」と正式に伝えられました。
 頭、真っ白です。「なんでですか!」とかワーっと言ったと思うんですけど、よく覚えてません。
 あっ、会社なくなる。そう思いましたね。(記事・紺野大樹、撮影・吉田敦史)
【メモ】高校卒業後、フリーターに。アパレル関係、舞台の裏方のアルバイトなどを経験。男性、40歳。

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