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尼崎JR脱線事故

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遺族役や医師役に分かれ、ロールプレイングで対応を学ぶ医師ら=2019年8月、千葉県船橋市(日本DMORT提供)
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遺族役や医師役に分かれ、ロールプレイングで対応を学ぶ医師ら=2019年8月、千葉県船橋市(日本DMORT提供)
尼崎JR脱線事故を機に発足した日本DMORTの活動を振り返る吉永和正理事長=川西市東畦野5、市立川西病院
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尼崎JR脱線事故を機に発足した日本DMORTの活動を振り返る吉永和正理事長=川西市東畦野5、市立川西病院
神戸赤十字病院心療内科部長で、日本DMORTの設立に尽力した村上典子さん=神戸市中央区脇浜海岸通1、神戸赤十字病院
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神戸赤十字病院心療内科部長で、日本DMORTの設立に尽力した村上典子さん=神戸市中央区脇浜海岸通1、神戸赤十字病院

 大規模災害や事故で家族を亡くした人たちを精神的に支える「日本DMORT(ディモート・災害死亡者家族支援チーム)」(兵庫県西宮市)の活動が広がっている。2005年の尼崎JR脱線事故の現場で遺族対応が不足していたとの教訓から、兵庫県内の医師らが創設した団体で、熊本地震などの被災地に医師や看護師を派遣。遺族の心のケアなどに当たった。医師らは「遺族が一番つらい時、医療の視点で寄り添う力をさらに充実させたい」とする。

 尼崎JR脱線事故では、けがの程度で搬送の優先順位を決める「トリアージ」が国内で初めて行われた。効率的な災害医療だったとして医療関係者から評価された一方、「救命困難」を意味する黒いタグを付けられ、搬送されなかった乗客も少なくなかった。

 05年10月ごろ、神戸赤十字病院(神戸市中央区)の心療内科部長村上典子さん(57)は、事故で大学1年の息子を亡くした母親から悩みを打ち明けられた。「多くの命が助かったことは理解している。でも『息子さんは黒でした』と言われたことは心に引っ掛かる」。事故や発災直後からの遺族支援が必要と痛感した。

 翌年2月、村上さんがこの経験を仙台市の学会で発表。出席した現日本DMORT理事長、吉永和正さん(71)は衝撃を受けたという。事故当時は兵庫医科大(西宮市)で救急医療に当たった。「災害医療には、亡くなった人とその家族への視点が抜け落ちていた」

 2人が中心となり、06年10月に「日本DMORT研究会」を設立。事故の遺族らとも対面し「死亡検案書の死亡時刻がみな同じなのはなぜか」など、遺体に関する質問などに答える場を設けた。村上さんは「遺族は疑問を解決する機会がなかった。最期の情報が軽視されてはいけない」と語る。その後、黒タグに判定時刻や判定者、現場の状況を可能な限り書き込むよう求め、今では定着している。

 13年の東京・伊豆大島の土石流災害で、初めて看護師らを派遣。16年の熊本地震では兵庫県警の協力も得て、初めて遺体安置所で活動し、17遺族に寄り添ってその声に耳を傾けた。

 17年7月に法人化。兵庫、愛知、福井の各県警と事前協定を結び、大規模災害を想定した訓練などに参加している。これまでに医師や看護師ら約800人が、実際の遺族対応を再現したロールプレーなどの研修を受けた。参加者は登録され、いざというときには全国の被災地などに向かう。

 災害派遣医療チーム(DMAT)のような知名度がなく、地域によっては遺体安置所に入ることを断られるケースも。吉永さんは「災害は必ず起こる。遺族を中長期的に支える仕組みをつくるため、平時から協定締結などを進めたい」としている。(竹本拓也)

【記事特集リンク】尼崎JR脱線事故

2020/4/22

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