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尼崎JR脱線事故

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長く抱いた問いについて、修士論文をまとめた三井ハルコさん=川西市小花1
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長く抱いた問いについて、修士論文をまとめた三井ハルコさん=川西市小花1

 2005年4月25日の尼崎JR脱線事故で次女(34)が重傷を負い、事故の負傷者や家族らの支援を続けるNPO法人「市民事務局かわにし」理事長、三井ハルコさん(64)=兵庫県川西市=が今春、神戸大学大学院で修士論文をまとめた。心に長くあった「人が人のために行動するのはなぜか」という問いの答えを求め、脱線事故の負傷者らにもインタビュー。1年かけて考察した内容を記した。

 当時大学1年生だった次女は、2両目に乗っていて脱線事故に遭った。その直前、三井さんは同NPO法人を立ち上げていた。自身が37歳の時に左ひざに腫瘍を患った後、社会とどう接点を持てばいいか悩んだ経験から、市民活動を行う団体などを支援する「中間支援組織」を設立。その矢先に関係者として事故に巻き込まれる形となり、「場をつくらないと被害者が孤独になる」と直感した。05年6月、負傷者らが思いを話し、共有する「語りあい、分かちあいのつどい」をスタートさせた。

 負傷者やその家族らの「空色の会」は08年に「つどい」から生まれた。当初はJRとの示談交渉などの情報共有が主だったが、交渉が終わってもメンバーは事故を伝える栞をつくるなどの発信を続ける。「なぜ社会貢献に向かうのか。私の病気や脱線事故のような『大きな経験』が影響するのか」。素朴な疑問はどんどん膨らんでいった。

 NPO法人理事長とともに、「川西市男女共同参画センター」と「同市市民活動センター」でもセンター長として多忙を極める。家族もいる。だが、偶然出会った神戸大大学院人間発達環境学研究科の松岡広路教授に背中を押され、「人生最後のチャレンジ」と覚悟を決めた。昨年、同研究科の1年履修の社会人枠に合格した。

 研究テーマは、人が社会貢献へと向かうためにNPOに何ができるのかに絞った。「空色の会」のメンバー2人を含め、市民活動を行う計10人に取材した。

 論文では、中間支援を行うNPO法人が、社会に点在する個人を集団へとつなげる、その助けとなることが求められる、と提案した。そのために、立場が近い者同士が集える「場」が重要であるとも指摘した。

 学生生活は「とにかく刺激的だった」と三井さん。週3日、仕事の合間を縫って川西から神戸に通い、年間に必要な30単位を取得した。三井さんは「NPOスタッフが支えてくれた。実践の場にいる私を先生も学生たちも尊重してくれた。すべてに感謝」と振り返る。次女からは「言葉にするのは難しいけれど、本当にお疲れさまです。尊敬しています」とのメッセージが送られてきたという。

 事故から25日で15年を迎える。新型コロナウイルスの感染拡大で関連行事は軒並み中止となった。それでも「みんなができることをしようとしている」。そんな負傷者らを、今後も支えていくつもりだ。加えて「社会のいろんな人たちに『自分の力が生かせるんだ』と、その気になってもらえるようなサポートをしたい」。挑戦は、まだまだ続く。(大盛周平)

2020/4/25

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