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仕上げの部品が納入されず春先から生産が止まり、工場内で行き場を失った在庫のパンプス=神戸市長田区日吉町4(撮影・後藤亮平)
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仕上げの部品が納入されず春先から生産が止まり、工場内で行き場を失った在庫のパンプス=神戸市長田区日吉町4(撮影・後藤亮平)

仕上げの部品が納入されず春先から生産が止まり、工場内で行き場を失った在庫のパンプス=神戸市長田区日吉町4(撮影・後藤亮平)

仕上げの部品が納入されず春先から生産が止まり、工場内で行き場を失った在庫のパンプス=神戸市長田区日吉町4(撮影・後藤亮平)

 新型コロナウイルスの収束が見通せないまま、夏が終わった。兵庫県内で初めて感染者が確認されて半年。外出の自粛、緊急事態宣言を受けた百貨店や小売店の休業など経済がストップした4、5月に比べれば、表面上は落ち着いたように見える。だが足元の地域に目を凝らすと、影響は多方面に広がり、復活の道筋は見えてこない。「疫禍(えきか)」の現場を歩いた。(紺野大樹)

 作業場の隅に、未完成の婦人靴が並んでいる。ヒールはなく、甲の部分の飾りも付いていない。

 「これね」と、工場を経営する男性(45)=神戸市長田区=が額の汗をぬぐう。

 「ずっと出荷できないままなんです。300足ぐらいあるんですけど…」

 神戸・長田を中心に集積するケミカルシューズ産業。靴作りには30ほどの工程があり、地域内に分業体制が広がっている。昌原さんの工場はメーカーの下請けで、靴底やヒールを取り付けたり、つま先を整えたりする。

 3月に受注した婦人靴は、新型コロナの影響で中国から一部の材料が届かなかった。材料の不足に加え、4月の緊急事態宣言では百貨店などが休業し、流通がストップ。メーカーから仕事が回らなくなる。

 「去年の4月は売り上げが300万円ぐらい。今年は90万円弱。5、6月はゼロ。もうボロボロですよ」。コロナ禍前は1日500足は作っていたが、今は8月になっても週に300足ほど。工場を開けない日も多く、パートの従業員は休んでもらっている。

 ここ数年はスニーカーなどに押され、婦人靴の低迷が続いていたという。

 「しんどいところにコロナが来た感じです。メーカーは『また忙しなったら頼むわな!』って声掛けてくれますが、問屋や小売店も在庫抱えてますし、いつに向かって頑張ればいいのか…。不安しかありません」

     ◆

 「靴のまち」は1995年の阪神・淡路大震災でも危機にひんした。

 日本ケミカルシューズ工業組合に加盟するメーカーは震災直前、226社を数えた。だが、震災で倒産・廃業に追い込まれる会社が相次ぎ、5年で約40社減った。

 「今残ってるメーカーは阪神・淡路やリーマン・ショック、東日本大震災を乗り越えてきた。だからそこそこ体力はある。けれど、今回は全く違う」。同組合の新井康夫理事長は顔をしかめる。

 「阪神・淡路では工場を立て直したら商品を売る先はあった。でもコロナ禍では、靴を作れるのに売ることができない。この苦しさは初めて」

 緊急事態宣言が明け、いったんは夏物のサンダルで盛り返した。だが各種イベントの中止などは続く。「女性が着飾って出て行く機会もない」と新井さん。消費の冷え込みに加え、コロナ禍での人々の暮らし方がファッション業界を直撃している。

 組合加盟メーカーの生産額は昨年6月に20億円を超えたが、今年6月は半分以下に落ち込んだ。

     ◆

 8月下旬の昼間。靴やブーツの「品番箔(はく)押し」を担う女性(76)は、同区にある小さな仕事場で一人、テレビを見ていた。

 靴やブーツの材料に一つずつ、指定された商品記号やサイズを金箔(きんぱく)で刻印する。30年以上前から営み、地域分業体制を支えてきた。だが、コロナ前は月60万円ほどあった売り上げは、5月が2万円。8月も20万円ほどだった。小さな仕事場への打撃は大きい。

 「ほとんど仕事あれへん。小さなとこは年寄りが多いから、『もう、やめよか』っていうとこもあるんちゃうかなあ」

2020/9/7
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