ハチワレ猫のオス3歳のマルが「広い世界を見たい」と愛媛から来て3年、創作童話「かなしきデブ猫ちゃん」兵庫編が完結した。五国(摂津、播磨、但馬、丹波、淡路)を勇敢に駆け巡り、4月からは中国新聞で広島編の連載がスタートする。文は人気小説家の早見和真さん、絵は絵本作家かのうかりんさん。神戸新聞も電子版「NEXT」で引き続きお届けするが、紙上ではこれでお別れ。マルが兵庫に残した物語をたどりたい。
■第1シリーズ(2022年4月~12月)マルのはじまりの鐘
故郷・愛媛を旅立ったマルは、船上で神戸に住む人間の10歳の女の子、桜子に出会う。桜子は城崎に住んでいた頃、自宅の庭に住みついたメス猫コザクラを引っ越す際に連れて来られなかったという。マルは桜子にコザクラと再会させると約束し、城崎に向かう。
マルは、神戸や明石、姫路で、猫の音楽隊やタコのハチベエ、コウノトリのジョイらと出会いながらの珍道中。赤穂では、赤穂ニャン士たちが主君に魚ドロボウの濡れ衣を着せた猫をこらしめる討ち入りにも参加。しかしマルは「にくしみはにくしみしか生まない」と仲を取り持つのだった。
そして城崎で、ついにコザクラを発見。しかしコザクラの恋人マルコムは、昔人間に傷つけられたことを恨み、コザクラと桜子との再会に反対する。しかし「みんなが仲良くなれますように!」というマルの必死の祈りが届き、神戸・須磨浦公園の満開の桜の下、コザクラはマルコムとともに桜子との再会を果たす。
■第2シリーズ(2023年4月~24年1月)マルの真夏のプレゼント
兵庫五国を旅したマルは、西宮の小学生ケンタと大親友に。でっぷりとしたお腹に愛くるしい顔だが、学校では外見をからかわれて悩んでいる。ケンタを勇気づけようと、マルは首に巻く播州織のストールをもう一つ手に入れ、プレゼントしようと旅に出る。
丹波市青垣町に播州織の素材となる綿花畑を訪ね、豊岡市の大学で「自分らしさ、自分だけの武器とは」と考える。播州織の産地、西脇市に着くとショーの最中で、マルはデザイナーのニーメに赤のストールを巻かれ、ランウェイを歩くことに。そこで「俺の武器は勇気だ!」と気づく。
マルはショーで出会ったモデル、ウサギのマーコと淡路島へ。マーコは運命の相手マルと会ったことで、故郷イギリスに戻ることになるが、最後の時間を使い、マルを宝塚市の歌劇団のステージに出演させる。マルは勇気を出して自分を表現すると、客席にいたケンタに赤のストールを贈る。そしてマーコは故郷へと旅立った。
■第3シリーズ(2024年5月~25年2月)マルの怪盗Xを追え!
マルはある日突然身に覚えのない宝石ドロボウの容疑者として、警察ネコに追われる身になる。指名手配の顔はマルそっくりな、コザクラの恋人マルコムだった。「きっと何か事情があるはず」。マルコムを捜すため、マル3巡目の兵庫の旅が始まった。
宍粟市のツチノコ、ノッコーらと出会いながら、マルはマルコムが地震でたくさんの人やネコが亡くなった一月十七日早朝、神戸に現れる「光のトンネル」で、コザクラを亡くなった人間のおばあさんと再会させるため、宝石商に奪われた形見の宝石を追っていることを突き止める。
加西市でついにマルコムを見つけたマルは、光のトンネルで再会しようと約束する。そして当日。コザクラはおばあさんと、ノッコーは亡くなったお母さんと再会する。その様子を見届けたマルは仲間に別れを告げ、淡路島の野島断層へ。ひび割れたトンネルから、新温泉町のおばあさん猫夢千代の故郷・広島にワープするのだった。
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