【連載】学校いま未来 第3部 休校から見えたこと(2)オンライン学習
2020/05/05 10:24
神戸市教委などが制作する授業番組。7日から放送が始まる=神戸市中央区東川崎町1(撮影・三津山朋彦)
「中世とはどのような時代だったんでしょうか」
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5月1日、神戸ハーバーランドの神戸市総合教育センター。サンテレビの小中学生用テレビ授業「おうちDEまなぼう」が収録された。
この日は、中学2年の社会科。平安末期から室町初期まで、約150年間を15分で駆け抜けた。50分授業の5回分に相当する。
先生役は同市教育委員会教科指導課の2人。堀井健史課長は「家庭のインターネット環境に差があり、オンライン授業は始められない。テレビなら全家庭にあるはず」と狙いを語る。
新型コロナウイルスの感染拡大で、一気に注目されるオンライン授業。しかし、公立校ではままならない。文部科学省によると、全国の教育委員会で同時双方向型のオンライン指導ができるのは5%にとどまる。兵庫県はゼロだった。
同市教委は番組のほかネット教材も用意した。ネット環境のない家庭向けに、学校所有のパソコン(PC)やルーターを集め、小6~中3(約4万5千人)で使えるめどはたった。
「やっとスタートライン」と市教委。すでに休校開始から約2カ月。家庭に届くにはあと2週間かかる。
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全国1816団体中、神戸市は1665位。
19年3月の文科省調査によると、教育用コンピューター1台当たりの児童生徒数は神戸市は8・9人。全国平均(5・4人)を下回り、市区町村など学校設置者の中でも最下位グループに位置する。
神戸市が、教育のICT(情報通信技術)化を進めるようになったのは最近だ。16年、ICT活用重点推進校に小中3校を指定。19年3月に5カ年の「ICT学習環境整備計画」を作ったばかりだった。
学校や児童生徒の数が多く、阪神・淡路大震災後の財政難が続いた同市。前述の計画でさえ、予算の都合で児童生徒のPC配備は盛り込まれなかった。
心理的な壁もあった。
「神戸の教育は、仲間作りや集団生活などに力を入れてきた」
市内の元校長は振り返る。教師が黒板にチョークで書いて教え、同じ方向を向いた子どもたちが一斉に写す。教師の人間力で授業を引っ張る。そのスタイルにこだわってきた。
「教育ICTには子ども個々人の力を伸ばす強みがある。その長所を見極められなかった」
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私学の動きは早い。パソコン雑誌出版のアスキー(東京)の創業者・西和彦氏が学園長を務める須磨学園中・高等学校(神戸市須磨区)。全生徒が制服ならぬ「制パソコン」と「制スマホ」を持つ。
五つの動画配信ソフトを使い分け、生徒は自宅で教師とやりとりし、授業を受ける。同学園は「平常通りの時間割」と胸を張る。
オンライン学習への保護者の期待は大きい。神戸市教委の竹森永敏学校支援部長は「5カ年計画と別枠で、まずは、1人1台のPC整備を急がないといけない」と焦る。
学校再開後にも触れた。「学習格差が広がる中、一斉授業では対応しきれない。一人一人に寄り添うためにもICTの力を使う」。教室の風景はいや応なく変わっていく。(井上 駿)
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