【連載】学校いま未来 第4部 新しい学び(1)休校解除
2020/06/09 06:20
分散登校で子どもたちが入れ替わる昼休みと放課後に、教室を消毒する教員=神戸市中央区港島中町3、港島学園中学部(撮影・鈴木雅之)
6月1日午前8時35分、1時間目のチャイムが鳴った。
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「やっと授業が始まりました。教科書は確実に終わらせますから」
神戸・ポートアイランドにある神戸市立義務教育学校港島学園中学部(中学校)。社会科の大越紳五教諭(26)は明るい口調で呼び掛けた。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、3カ月ぶりに授業を受けた生徒たち。少し表情が硬いように見えた。
同市立の小中学校では12日までクラスを2つに分け、小学校では毎日交代で登校。中学校では午前と午後で生徒を入れ替える。
教員は同じ授業を2回、行う。昼休みや空き時間には教室を消毒する。放課後には休んだ子どもの自宅を訪問。家庭学習も並行して続くため、課題作りにも追われる。学力の格差を埋めるため、子どもたちの個別支援もしなければならない。
人手がほしいところだが、いつもの助っ人にも頼れない。教員志望の大学生が授業を手伝う「スクールサポーター」だ。昨年度は618人もの“先生の卵”が現場を支えたが、活動は控えている。
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神戸市教育委員会によると、休校に伴い小中学校では年間に必要な授業時数の2割にあたる約180~190時間が失われた。それを補うため、小学3年以上に火曜の6時間目、中学生に水曜の7時間目を行い、夏休みも15~24日間短縮する。
悩みは、時間のやりくりだけではない。
「子どもたちには、人と意見を交わしながら考えを深める学習をしてほしかったのだが…」。市教委担当者は表情を曇らせる。
小学校では4月、新しい学習指導要領が導入されたばかり。キーワードは「主体的・対話的」。しかし、3密防止がその理念を妨げる。対話しようにも、隣の席は遠い。市教委も「当面、グループ発表や地域を歩いて調査する活動などを行わないように」と各校に通知した。
「安全第一だが、一方的な教え込みにならないようにしなければ」と市教委。子どもは黙って黒板を向き、先生の言葉を聞く-。ともすれば“先祖返り”になってしまう。
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「夜間の電話を音声アナウンス対応に切り替えます」「宿泊を伴う行事を見直します」「動物の飼育を縮小します」-。
コロナ流行前の今年1月、市教委は小中学生の保護者にA4のプリント1枚を配った。教職員の業務見直し策だ。
市教委によると、2019年度の時間外勤務時間(8月除く)は小学校で月平均44時間、中学校は62時間に上った。18年度には、150時間を超えた中学校教職員が9人もいた。今年3月末には市の規則を改正し、初めて残業時間の上限を定めたばかりだった。
コロナ禍の休校で3、4月の勤務時間は減った。しかし、市教委学校支援部の竹森永敏部長(48)は「問題はこれから。効率的にやらないととんでもないことになる」と危惧する。
授業の量と質の確保。先生の働き方。複雑な方程式を解く鍵は、どこにあるだろうか。(斉藤絵美)
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昨年秋に発覚した神戸の教員間暴力問題から始まり、現在の教育現場を取り上げてきたシリーズ「学校いま 未来」。第4部ではコロナ禍を経て、あらためて求められる教師の質や新しい学びの形について考える。