【連載】学校いま未来 第4部 新しい学び(2)教員の多忙化
2020/06/10 11:40
2017年度から学校現場に導入されたタイムカード。教職員自身の勤務状況を管理する=神戸市内の中学校(撮影・鈴木雅之)
職員室の壁に、薄い箱のような機械が取り付けられている。出勤してきた教員がカードをかざす。学校を出る時も同様だ。
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一般企業ではやや時代遅れの印象もあるタイムカード。神戸市教育委員会は2017年度から、市内の小中高校などに置き始めた。先生の働き方改革の第一歩だった。
「朝の7時出勤、帰りは午後10時」「残業時間は月100時間」-。ブラックとも言われる学校現場。市教委はタイムカード導入とともに、残業時間を前年度より10パーセント減らすことを目標に掲げた。
しかし、効果は薄く、残業時間もほぼ横ばいだ。同市教委が19年夏、教職員約2400人に行ったアンケートでは、前年度と比べて多忙感が「悪化した」「やや悪化した」と答えた人が28%に上った。「改善した」「やや改善した」と答えた人は3割を切った。
東須磨小の教員間暴力問題の調査報告書では、学校の構造的問題として次のように記している。
「とにかく教員が多忙であり、子どものこと以外にかまっていられない」
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教員はなぜ、ここまで忙しくなったのか。
まず、独特の仕組みにある。教員の時間外勤務は「自発性、創造性」に基づくものとされ、校長も決まった項目以外では残業を命じることはできなかった。従って残業手当はなく、給与月額の4%を「教職調整額」として支給されていた。
根拠となる法律は、1971(昭和46)年に制定された教職員給与特別措置法(給特法)。いくら長く働いても残業代は出ないため、「定額働かせ放題」と批判の声が高まっていた。校長が教員の勤務状況を把握する意識も薄かった。タイムカードが必要なかったゆえんだ。
昨年、国は重い腰を上げた。残業時間について月45時間(年間360時間)を上限とするガイドラインを策定。12月に法改正された。
だが、これで即解決というわけでもない。神戸市教職員組合の渡邊健委員長(45)は「残業代が出ないからといって授業の準備を怠れば、目の前の子どもを満足させられない」と語る。
英語やプログラミングなど、新たな教育課題が次々に増えても、熱意や使命感で乗り切ろうとしてしまう。
解決のかぎとなる教員数も、少子化とともに減り続けている。渡邊委員長は「仕事が増える中で残業を減らすなら、人が増えないとどうにもならない」と漏らす。
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「子どもたちが楽しみにしていることが、どこまでできるか…」
神戸市立山の手小PTA会長の佐久間健さん(47)は、ため息をつく。新型コロナウイルスによる休校の影響で、運動会など多くの行事で縮小が検討される。そもそも業務見直しで、小学校のスキー合宿も段階的に廃止することが決まったばかりだ。
「働き方改革、コロナ。いずれも仕方ない。でも、本業である子どもと向き合う時間はしっかり確保してほしい」
先生の“本業”とは何か。コロナ禍であらためて問われているが、感染流行前から、神戸でもその仕分けは進められていた。(斉藤絵美)
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