<先生はいま>教員試験 競争率低下 「質・量」確保に教委懸命
2019/12/27 10:00
教育科の授業に臨む生徒ら。学校現場に必要な資質を磨く=神戸市須磨区西落合1、市立須磨翔風高校
公立学校の教員採用試験で、競争率の低下が全国的な課題となっている。とりわけ顕著なのが小学校。文部科学省によると、2019年度採用分は全国平均で2・8倍と、ピークだった00年度(12・5倍)から大きく落ち込む。各地の教育委員会は教員の「質と量」を確保するため、対策に乗り出している。(佐藤健介)
兵庫県は小学校教員採用試験の競争率が例年5倍近くあり、他の自治体に比べると〝狭き門〟。それでも人材確保への危機感は強い。20年度採用の試験では、それまで49歳としていた受験資格の年齢制限を撤廃。一般教養試験の出題数も約3割減らした。一方で、個人面接を充実させ、「より人物重視での選考」に見直しているという。
神戸市教委も20年度から、受験者の年齢上限を45歳から59歳に緩和。ただ、「多くの人に応募してもらえれば、それだけ優れた教員が集まる可能性が高まる」(担当者)との狙い通りにはいかず、実際の合格者は採用計画を下回った。
文部科学省によると、年齢制限を緩和する動きは全国的に加速し、47都道府県と20政令指定都市のうち、既に半数近くが撤廃している。
18年度、全国最低の1・8倍だった新潟県は、19年度に1・2倍まで急落。そこで20年度からは音楽や運動の実技と模擬授業を廃止した。その結果、19年度に377人だった受験者は20年度に597人に増え、競争率も2・3倍に回復した。
長時間労働が常態化した教員の働き方改革をアピールするのは東京都教委。19年度には小学校教員の競争率が1・8倍まで低迷し、学習プリントの印刷や授業準備を補助するスタッフの導入など業務負担軽減策を紹介する漫画も作った。担当者は「志望者が抱く不安を払しょくしたい」とする。
高校時代から人材を育てる取り組みもある。教員を目指す生徒向けの科目「教育科」を設ける須磨翔風高校(神戸市須磨区)。指導案の作成法を学んだり、模擬授業を行ったりするほか、いじめ対応や体罰といった教育課題の解決策をグループで議論する。
「言葉の掛け方一つで子どもが変われることを実感でき、モチベーションが高まる」と2年の後藤夢葉(ゆめは)さん(17)。大学からも講師を招いて助言を受けるなど実践的な内容で、担当の黒田理恵子教諭は「教師の魅力に加え、難しさを伝えるのが狙い。真の意味でなり手を育てたい」とする。