清流への道(上)開発支えた「ダンプ道」
2019/01/28 05:30
土砂を載せたダンプが行き交う昭和30年代後半の「清流の道」(住吉歴史資料館提供)
六甲山の香りをのせた風が頬をなでる。澄んだ水が激しく、時にゆったりと山手から低地へ。住吉川(神戸市東灘区)の河川敷に整備された片道2・5キロの遊歩道を歩きながら、「住吉川清流の会」代表の柴田征三さん(75)=同市東灘区=は口を開く。
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「今は『清流の道』ってしゃれた名前やけど、私ら若い頃は『ダンプ道』やったんや」
この遊歩道、実は上流の渦森山の宅地開発で出た土砂を臨海部の埋め立て地に運ぶためにつくられた。1963(昭和38)年から1日約千台のダンプカーが行き来し、6年間で延べ190万回を往復、計800万立方メートルの土砂を運んだという。
この開発手法は米国の経済誌に「山、海へ行く」と紹介され、以降、神戸のキャッチフレーズとして定着した。工事が終わった74(同49)年、削られた山麓に街(渦森台)が生まれ、ダンプ道は市民の憩いの場に。「私たちも水遊びのイベントを開いたり、清掃したり。住吉川を守り、伝えている」
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ザワザワと音を立てて流れる水が驚くほど澄んでいる。ここは山奥ではない。邸宅が立ち並ぶ高級住宅地。「水源地を見てみたい」。そんな衝動にかられ、川沿いを上った。
約2時間。標高約650メートルの砂防ダム「黒岩谷副堰堤」に着いた。高さ8・5メートルのコンクリートの一部に開いた穴から水が流れる。約1キロ先が水源地のようだが、たどれる道が見当たらなかった。ごつごつした岩の近くには魚影がちらほら。東灘区に豊かな恵みをもたらす「清流」の原点に思いをはせた。(村上晃宏)
【住吉川】六甲山頂(931メートル)東約1キロを水源に10以上の渓流を集めて南下、大阪湾に流れる約9キロの2級河川。支流を合わせた総延長は36キロを超える。アマゴやカワムツ、ヨシノボリなどの魚のほか、サワガニやゲンジボタルも生息する。