臨床応用を目指して

2013/04/25 17:45

 今年は例年より早く桜が咲きました。京大iPS細胞研究所(CiRA)の前庭の桜も随分早く咲き、新年度の集合写真を撮影した5日にはかなり緑になっていました。研究棟が竣(しゅん)工(こう)した2010年に3本の桜の木が植樹され、当時の事務長が「所長がしかるべき賞を受けた翌春に満開の桜を楽しめるように」と大切に手入れをしてくれていました。昨夏には毛虫が大量発生し、ほとんど葉が無くなった時期もありましたが、現在の事務長もしっかり手入れしてくださり、今年も花が咲きました。

 私たちが大切に育ててきた「iPS細胞」も、やがてたくさんの花を咲かせられるように、一生懸命手入れをしているところです。CiRAでは大きく二つの研究を進めています。一つは、再生医療(細胞移植)に使う高品質なiPS細胞を作り備蓄するiPS細胞ストック計画です。作ったiPS細胞は、他機関にも評価してもらい、より品質のよい細胞株を選び備蓄します。それを他の研究機関に配り、そこで神経や心筋など必要な細胞が作られ、臨床研究に使われる予定です。この計画は、治療に使用する基となるiPS細胞を準備するという大変重要な役割を果たします。
 もう一つは、患者さんから作ったiPS細胞で新しい薬を作る研究です。薬の開発には長い時間がかかりますが、対象となる疾患数は、細胞移植の対象と比べ、桁違いに多いと考えています。もっと多くの疾患を研究している研究者に協力していただければ、より多くの病気で苦しむ患者さんに新しい治療薬を提供する可能性も広がります。
 私たちは、この4月にCiRAから神戸大学に移った青井貴之教授をはじめ多くの研究者と協力しながら、再生医療と創薬で一日も早く患者さんのお役に立てるよう研究に励んでいます。ようやく蕾(つぼみ)が大きくなりはじめたiPS細胞の花がうまく開くように、今後とも皆さまのご支援・ご協力をお願い申し上げます。
(山中伸弥=京大iPS細胞研究所所長・教授)

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