iPS網膜細胞 光を感知 理研、失明マウス回復確認

2017/01/11 14:51

移植後のマウスの網膜。もともとの網膜細胞(緑)と移植した視細胞の末端(赤)がつながっている(理化学研究所提供)

 「網膜色素変性」という病気で目が見えなくなったマウスに、人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った網膜の細胞を移植することで、光を感じる視覚が回復することを、理化学研究所多細胞システム形成研究センター(神戸市中央区)のグループが初めて確認した。ヒトの失明原因にもなる病気で、2年以内に臨床研究の申請を目指すという。

 同センターの万代道子・副プロジェクトリーダーらによる成果で、10日付の米科学誌ステムセル・リポーツ電子版に発表した。
 網膜色素変性は遺伝性の病気で、網膜の視細胞が死んでいく。グループはマウスのiPS細胞から視細胞などのもととなる細胞を作製。網膜色素変性で失明したマウスに移植し、効果を検証した。
 部屋が光ると5秒後に電気ショックを与える実験を繰り返した結果、移植したマウス21匹のうち9匹は、光るとショックを避けられる隣室に逃げるようになり、光に反応していることが示された。一方、失明したマウスは逃げられずに刺激を受け続けた。
 また、移植した視細胞とマウスのもともとの網膜細胞との間で、実際に光の情報が伝達されていることも確認した。
 現段階では移植部分は網膜全体の5%未満で、視覚の回復は光が分かる程度という。万代副リーダーは「回復の度合いが高まるよう研究を続けたい」とする。(武藤邦生)

▼視神経伝達 再生へ一歩
 iPS細胞を使った目の再生医療では、理化学研究所多細胞システム形成研究センターの高橋政代プロジェクトリーダーらが、「加齢黄斑変性」という病気の患者に、網膜色素上皮細胞を移植する臨床研究を進めている。
 同じプロジェクトのグループが今回、視細胞のもととなる細胞の移植により、マウスの視覚が回復することを確認した。色素上皮細胞は視細胞の外側にあり、傷ついた部分を移植で取り換えれば一定の機能回復が期待できるが、視細胞はもともとの網膜細胞との情報伝達構造(シナプス)ができ、神経回路が形成されて初めて能力を発揮する。移植成功のハードルは高く、より本質的な再生医療に向けた一歩と言える。
 ただ「ヒトでシナプスができるかは未知数」と万代副プロジェクトリーダー。その上で「光を感じる程度」という回復の程度を高めることも期待される。

 〈網膜色素変性〉遺伝子の変異が原因で、目の奥で光を受け取る網膜の視細胞がだんだんとなくなっていき、視野が狭くなったり、暗がりで物が見えにくくなったりする難病。失明することもある。原因遺伝子は70以上あり、患者は3千人に1人と推定される。国内患者は少なくとも約2万9千人。遺伝子治療や人工網膜の開発が試みられているが、治療法は確立していない。

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