(4)乙仲通 学生発「レトロ」再発見
2016/03/20 11:15
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昭和の風情を色濃く残すビルが並ぶ神戸市中央区栄町通と海岸通かいわい。いや、「乙仲(おつなか)通」と書いた方がぴんとくる人が多いだろう。
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欧州の街角を思わせる雰囲気。小さくともセンスの良い雑貨店や古着店。人気のエリアを、2月下旬、女子大生7人がにぎやかに歩き回った。
「ここを休憩場所にできないかな」「ギャラリースペースに使うのもいいかも」
気になる場所にスマートフォンのカメラを向けては、手元の地図にメモ。1級建築士の米原慶子さん(56)が講師を務める、神戸松蔭女子学院大(灘区)のゼミ生たちだ。
学生の1人が「古くて魅力的」と興味を持ったのを機に、2014年度からゼミの研究対象に。継続的に足を運び、地元の商店主らとはもちろん、日本建築家協会兵庫地域会、関西の他大学、高専などとも連携してまちづくりのアイデアを出し合っている。
「通り全体の雰囲気が好き。ビルの中も入り組んでいて、来るたびに発見がある」と4年の小林柚希さん(22)は目を輝かせる。
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昭和の時代、神戸港に近いこの一帯には、乙種海運仲立(なかだち)業、通称「乙仲さん」が軒を連ねていた。海運事務所を改装して店が入り、十数年前から今のような姿になった。
「神戸が阪神・淡路大震災の復興に奔走しているころから、『面白い街や』と目をつける人が増えましてね」
商店主らでつくる「乙仲通界隈(かいわい)プロジェクト委員会」事務局長の道上順一さん(65)が振り返る。プロジェクトは「乙仲の名前と人気が定着した今だからこそ、地域の活性化に本腰を入れたい」と4年前に発足した。
そんな道上さんたちにとって、米原ゼミの登場は渡りに船だ。
「学生さんが好きなことできる場所になればええなあ」。1月末の理事会でも声が上がった。東西1キロほどの通りに新しい風が吹き、思いが渦巻く。
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2年前にカフェを開いた梅谷周平さん(31)は、「発展途上」の機運を感じて出店を決めた。
留学経験のあるフランスのカフェを参考に、若手芸術家らに発表の場を提供。英会話教室やセミナーも開催するなど、地域の文化・交流拠点を目指して奮闘中だ。
会社も自宅も乙仲に構える鈴木弘美さん(50)に言わせれば、「4畳半の街」。
「ハイブランドの服からホルモンの店まで何でもある。住民はみんな乙仲が大好きだから、毎日楽しい」
週末の昼下がり。大学生とおぼしき男性2人組が、通りの真ん中で立ち止まった。
「なんか面白そうやん」。気になる看板でも見つけたのか。古めかしいビルの中に、軽い足取りで吸い込まれていった。(黒川裕生)