(3)家族に生きざま伝えた
2019/08/14 09:00
廣尾すみゑさんの棺おけに入れられたマイク。孫たちが手作りした=小野市内
6月18日午後1時49分、小野市の廣尾(ひろお)すみゑさん(68)は息を引き取った。家族や友人、医師、看護師ら16人が見守った。
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すすり泣きが響く中、看護師の北山臣子(しんこ)さん(55)が小学生と高校生の孫たちに話し掛ける。
「これがおばあちゃんの生きざま。こうやって人は亡くなっていくけれど、命って大事にせなあかんよって、みんなに伝えてくれてる」
私たちが訪問したのは午後1時前。それから1時間ほどの出来事だった。私たちも、すみゑさんの生きざまの一端に触れることができた。
30分ほど時間をおいて、亡くなったベッドの上で、体を清める「エンゼルケア」が始まる。北山さんら3人が、すみゑさんの髪と体を洗い、口の中をきれいにしていく。顔には保湿剤を塗る。「汗、かいたもんなぁ」と、声を掛けながら。
「ばあちゃん、見たい」。小学2年の孫の三獅郎(さんしろう)君(7)がベッドをのぞきにやってくる。
隣の和室で長男の妻、理絵さん(44)とカラオケ仲間の女性が、私たちにすみゑさんの様子を話してくれた。
「家に帰ったら、『狭い風呂に入りたい』って言うてた。何十年もこの家やから。病院の広い風呂じゃなくて、狭い風呂がいいって」と理絵さん。友人の女性は「退院してから、息子さんが入れたコーヒーを2口飲んだって。おそうめんもヤマノイモも食べたって」。
話を聞いている間もケアは続く。すみゑさんは生前、自分で選んでいた黄緑色の着物を着せてもらっていた。帯は鮮やかなオレンジ色だ。髪の毛にくしを通してブローをする。友人の女性が赤い口紅を引く。
ケアが終わり、着物姿のすみゑさんの周りに、再びみんなが集まる。社会人の孫、将太郎さん(22)が0歳のひ孫を連れてきて、みとりの時よりも人数が増えている。
もう涙はない。小学3年の孫、色花(いろは)さん(8)と三獅郎君は「大好きなばあちゃん」と3人で写真を撮った。
すみゑさんはこの3日前の6月15日、隣の加西市のカラオケ喫茶を訪れたそうだ。