(4)孤独死はいい、孤立はだめ

2019/12/13 11:12

孤独死の現場に残されていたメッセージ(メモリーズ提供)

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 遺品整理会社「メモリーズ」(本社・堺市)を経営する横尾将臣さん(50)はそう言って、一枚の写真について説明を始めた。手のひらほどのメモ用紙を写した写真だ。
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 横書きで「さむい」「さようなら」とある。よく見ると「さむい」は鉛筆で、「さようなら」はボールペンで書かれている。続けて書いた文字ではないのかもしれない。
 写真を撮ったのは神戸市兵庫区の集合住宅の一室。5年ほど前の春のことだ。70歳を前にした男性が亡くなっていた。布団に横たわり、死後4、5日たっていた。
 「物が少なくて、寂しい部屋でした」。1DKで押し入れに服が少しだけ。警備員の仕事をしていたのだろうか、反射材が付いた上着があり、誘導用の棒が転がっていた。
 こたつの上に食べかけの弁当が腐った状態で置いてあり、虫がわいていた。メモはその横にあったそうだ。
 「寒かったけど、苦しかったけど、誰にも相談できなかったんでしょうね」。横尾さんの言葉に、私たちはうなずくことしかできない。
 もう一枚、2009年の夏に大阪市内の現場に残されていたメモの写真について話を聞く。冷蔵庫に張られていたらしい。
 「明日もまた 生きてやるぞと 米を研ぐ」。誰かの川柳を気に入って書き写したのだろうか。
 亡くなっていたのは60歳前後の男性だった。近所付き合いはなかったようだ。
 「こんな紙張って、『おれは死ねへんぞ!』みたいな感じですよね。年を重ねると経済的、身体的な不安が押し寄せてきて、人とつながってないと頑張れないと思います。それなのにうまく人とつながれず、すごい葛藤してたと思うんです」
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 08年に「メモリーズ」を設立した横尾さんは数々の現場に足を運んだ。今年は7~9月だけで約60件。「スケジュールが合わず断ることも多かった。孤独死はなくなりません」。横尾さんはそう言い、言葉を続ける。「住み慣れた家で死にたいっていう人、多いですよね。家で孤独死してもいいと思うんです。でも孤立はだめ。『見つけてあげる』という支え方が必要じゃないでしょうか」

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