(4)孫は忘れちゃうんやろな

2020/03/26 09:50

森脇真美さん(左から3人目)の家族写真。昨年9月に写真館で撮影した(夫の森脇祐一さん提供)

 「孫が最近、私のことを『グランマ』って呼べるようになったんよ」 関連ニュース 西脇工エース新妻遼己、都大路を心待ち 花の1区で「1番手」狙う 全国高校駅男子22日号砲 環境に優しいヘアリーベッチを稲作に 田にすき込むと天然肥料、温暖化防止にも一役 東播磨 返礼品に1200万円のドームテント、高額所得者にPR 加東市ふるさと納税 山国地区産山田錦の日本酒も

 大腸がんで、明石市のふくやま病院の緩和ケア病棟に入院する森脇真美さん(57)がほおを緩める。1月下旬、私たちは病室で話を聞いている。長女の猪野麻帆さん(27)が男の子を出産したのは2018年5月、がんが分かって4カ月後のことだった。
 麻帆さんは私たちに「母はこの子の成長を生きがいの一つにしています。見るだけでずっと笑顔になるんです」と言った。
 もちろん、孫が少しずつ言葉を発するようになるのはうれしい。でも、1人になると考えてしまうことがある、と森脇さんは漏らす。
 「孫の記憶に私は残らない、忘れちゃうんやろなあって。もうちょっと先、せめてあの子が私を覚えてくれるまでは生きたかったなあ」
 森脇さんの寂しさが伝わってくる。取材ノートに書きとめた文字が涙でかすむ。
     ◇     ◇
 娘さんへはどんな思いがありますか?
 私たちの問いに、森脇さんは「それぞれの生活は心配ないけどね」と言い、娘たちが幼かった頃を振り返った。森脇さんは30代前半で両親を相次いで亡くしている。当時、長女の麻帆さんはまだ1歳だった。「母に手伝ってほしい、知恵を借りたい…。そう思ったことはやっぱりあったの」。森脇さんが声を詰まらせる。
 娘たちの運動会を見に行き、祖父母が一緒に来ている家庭をうらやましく思ったこともある。「娘も私と同じように『お母さんがおってくれたら良かった』って考えてしまうんかなあ」。森脇さんが言葉を絞り出した。
     ◇     ◇
 2月に入り、森脇さんはいったん自宅に戻った。退院後の診察では、左右の肺にがんが広がり肝臓も腫れていた。「次に入院すると帰りにくいかもしれません」。主治医からそう告げられた。
 2月7日、私たちは自宅を訪ねた。森脇さんは背中を少し曲げ、廊下の壁をつたって歩く。1月に病院で会った時よりも声に張りがない。
 退院してから、娘や夫にスマートフォンでメッセージを送ったそうだ。森脇さんがその画面を見せてくれた。

神戸新聞NEXTへ
神戸新聞NEXTへ