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精神科医は見た
何となく気持ちがざわざわしていませんか。
精神科医の松井律子さんが「読むクスリ」をお届けします。
あなたの心に効くことを願いながら。
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The art of Neurosurgery
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The art of Neurosurgery

 先日、梅田の百貨店で友人とお茶をしていたとき、ふっと横を見るとイギリス製高級車が2台も止まっているではありませんか。何かショーをするらしく、すぐそばのステージではスピーカーやライトの準備が行われています。床は石張りになっており、そこにいくら軽量化されたとはいえ、1・7トン以上という重量の車が2台ものっかっているのです。

 友人は「この2台の車、合計でいくらかしら」と高価な製品のプロモーションに驚いた様子です。私はいったいどこから9階まで搬入したのかと考えあぐね、あちこち見回してみるけれど、それらしき大きな搬入口が見当たりません。これだけの重量の車2台を搬入できるエレベータも相当なものだろうし、数日間展示していて床が抜けないのかなどと頭の中は疑問符でいっぱい。ほかに喫茶店も2店舗、数店舗の雑貨店やギャラリーが軒を並べるフロアに千人規模で人が集まっている。合計いったいどのくらいの重量が床にかかっているのでしょう。

 大都市のど真ん中に、これだけの重量に耐える建築をぶっ建て、しかもすごい重量の車を搬入する設備を目につかない場所に設置する。日本の建築技術水準の高さを思い知る経験でした。

 その翌日、ニュースでマンションの基礎工事で行われた偽装事件を知りました。驚くべき技術水準の高さとモラルの低さ。この2つが1人の人間のなかで同居しうることに恐怖を感じました。

 かつてはモラルや職人気質こそ高い技術水準を生み出す土壌であると考えられてきました。それが高い技術水準を持ちながら偽装に走り目先の利益追求を求めることが、それほど稀ではないと思わざるを得ない事件の数々が起きてきました。今では、「技術と人柄は別物である」という経験則を常に念頭に置いて判断する習慣がつきかけています。

 うーん、寂しい。あまりに寂しすぎる。建築もさることながら、何十年か先に医療の分野で同様の状況になったら、どうしよう。神様、仏様、コンコンさん、お地蔵さん、その他の方々にお願い致します。年齢を重ねて病気になったら、神の手の持ち主より普通に優しく治療してくれる主治医にお引き合わせください。いや、できましたら神の手の次の次くらいに高い技術を持った優しい主治医にお引き合わせくださるよう、お願い致します。ちょっと欲張りすぎかもしれん。

    ◇

 コラム横にある挿し絵は、脳神経外科医で、大西脳神経外科病院(明石市)理事、神経科学研究所長の垰本勝司さんの作です。垰本さんは1967年広島大学医学部を卒業。神戸大学脳外科講師や兵庫県立成人病センター脳外科部長を務めました。

執筆者のプロフィール
精神科医 松井 律子
まつい心療クリニック院長(神戸市東灘区)
専門分野:うつ病、身体表現性障害(心身症)、女性のストレス関連疾患、その他精神疾患一般

1990年神戸大学大学院医学研究科卒業、1991年学位取得
神戸大学医学部付属病院精神神経科、加古川市民病院神経科勤務を経て、1997年より、神戸市東灘区で、まつい心療クリニック院長として診療に従事。心と体を密接不可分な一体として把握し、一人ひとりのオーダーメイドの治療を旨とする、ハートケアの概念の実践を目指している。2003年4月から2005年3月まで神戸新聞紙上に『800字の処方せん』を連載。

著書:
男医にはわからないこと―ハートケア事始め―三五館,1997年10月刊
「疲れた心」を軽くする本―PHP研究所刊,2010年10月刊

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ネクスト編集部 webhensyu@kobe-np.co.jp
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