尼崎連続変死 「角田家、戦時下の監禁と同じ」鑑定人尋問一問一答
2015/12/17 20:14
尼崎連続変死事件で、角田美代子元被告=自殺時(64)=の義理の娘瑠衣被告(30)に対する裁判員裁判第22回公判が17日、神戸地裁で開かれた。瑠衣被告の心理面を調べた西田公昭・立正大教授=社会心理学=の鑑定人尋問があった。
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弁護側との主なやりとりは次の通り。
-(被害者で)姉の茉莉子さんと、瑠衣被告の扱いの差は何だったと考えるか。
「元被告の戦略の中に、片方を取り入れて、片方を分けるというやり方があると思います。(当時、瑠衣被告は17歳で)いがみ合うことが多いのもその年齢であることを、おそらく元被告は経験として知っていて、2人の葛藤を見いだせるというのを知っていたのだと思います」
-元被告が、瑠衣被告を選んだ理由は。
「親との関係ですね。何らかのコンプレックスないし否定的な感情を見て取ったのもあるだろうし、年齢も若く、元被告にとっては扱いやすい対象だったのだと思います」
-誰でも、元被告のマインドコントロール下に置かれるような環境だったのか。
「もし自分が17歳の時に、そういう環境に置かれたとするなら、常識的な行動を取れるか。一種の特殊な状況で、戦時下で監禁されるのと同じような状況だと思います」
-この公判で、瑠衣被告は、残酷な行為についてもかなり淡々としゃべっており、反省していないのではとの印象も受ける。
「淡々としゃべるのは、反省しているからです。自分に不利になることも平気でしゃべるというのは、バランス感覚のある人から見ると『怖い』と思うかもしれないが、淡々としゃべっていること自体が反省しているということです」
-元被告を120パーセント否定できていないようにも見える。
「それはマインドコントロール下における、2人の絆の後遺症と考えてもらえたらいいと思います。時間をかけて解消していくべきで、全てを否定すると自分のアイデンティティーが崩壊する危険を感じているのだと思います。瑠衣被告に限らず、不安な状況で、敬愛してはいけない対象を敬愛することはよくあることです」
-全否定することは必要?
「必要ないと思ってます。そういう対象でもないのではないでしょうか。ほめてくれて、居場所を与えてくれた元被告が、話がうまくて説得力があったのは重要で、どの人も彼女の言うことに『すみません』と言うことしかできなかった。誰も反論できなかった。元被告の言うことには納得できる部分があったんです。全てを否定することは、それ自体がおかしなことで、論理的にも難しいのではないかと思います」
◆ ◆
裁判官との主なやりとりは次の通り。
-瑠衣被告について「解離」という用語を使って説明している。解離とは。
「自分で自分をモニターできなくなる、自分がどんな状況で、何を考えているか分からなくなるということです。何らかの極限的な経験をした人はよく経験していることで、トラウマ的体験という言葉でよく理解されていることです」
-「非人間化」というのは。
「攻撃を与える対象への感情です。家畜同然というようにおとしめることで、罪悪感が湧かないようにさせる。(瑠衣被告の場合)親としていかに破廉恥かを見せつけて、親を汚らわしく思わせることで、こんなの人じゃないんだから攻撃してもいいんだ、ということですね」
-角田家で生活していた人には逃げ出した人もいる。逃げ出さずにいた人と比較すると。
「『学習性無力感』という言葉があって、逃げても逃げ切れないだろうと思った人と、勝負をかけた人との差でもあります。ただ瑠衣被告の場合は、『ここにいた方が幸せ』『ここにいるしかない』というポジティブな感情を誘発されているのが違うところだと思います」
-瑠衣被告は「家族との親和性が乏しい」と説明があった。ここでいう家族とは?
「(実家と角田家の)両方だと思ってます。検査で、家族の絵を描いてくださいと言うと、瑠衣被告は2つ描いていて、どっちだろうと混沌(こんとん)としているようで、(角田家で過ごした)10年と、それ以前とがあるのだなと思いました」