警察への通報、相談が事件直前急増 洲本5人刺殺
2015/03/17 12:00
平野容疑者の行動と被害家族の相談状況
兵庫県洲本市の民家で男女5人が刺され死亡した事件で、平野達彦容疑者(40)=殺人容疑で送検=は事件直前、被害者の平野毅(たけし)さん(82)一家とのトラブルが急増していた。明石市内から実家に戻っていた1月以降、インターネット上の中傷がエスカレート。毅さんや家族が連日のように警察に相談する中で、事件は起きた。
平野容疑者はホームページや短文投稿サイト「ツイッター」などで、特定の団体や個人を一方的に中傷していた。
毅さん一家については、平野容疑者が明石市に住んでいた昨年夏ごろには、顔の写った写真や自宅地図などで中傷を始めていた。だが、投稿が頻繁になったのは、洲本市の実家に戻ったとみられる今年1月以降だ。
最初の110番は2月14日。毅さんの孫に当たる男性と口論になり、写真を無断で撮影したという内容だった。洲本署員が平野容疑者の父親にも接触したが、面会を断られたという。
その後も毅さんの家族は繰り返し相談。2月下旬には、「警察は何もしてくれないのか」と詰め寄ったが、署員は現時点で事件化は難しいとの回答をしたという。
この間、中傷はとどまることはなく、事件までの1週間だけでも、毅さん一家の写真や自宅住所などを添えた投稿は20回以上に及び、攻撃的な言葉も見られた。最後の書き込みは事件前日の昼だった。
一方、死亡した平野浩之さん(62)も自宅の外観写真や地図などを記載されていたが、警察や行政に相談したという記録は確認されていない。知人によると、浩之さんは「困ったなぁ」と笑い、取り合わない様子だったという。
事件前夜の8日夜、浩之さんは家族に「庭で達彦(容疑者)ににらまれた」と話した。事件現場から脱出した浩之さんの長女(32)は駆け込んだ先の民家で、平野容疑者について「知らない」と話したという。
長女を保護した40代男性は「ただ、『なんで』という気持ち。こうなる前に何とかできなかったのか、無力さを感じる」と話す。