平野浩之さん、地域の人望厚く 洲本5人刺殺事件
2015/03/17 12:00
刺されて死亡した平野浩之さんは、兵庫県洲本市の測量設計会社を定年退職後、2013年4月から嘱託職員として兵庫県洲本土木事務所に勤務。上司の男性(58)は「まじめできちょうめんな性格。頼りにされ、人に恨まれる人ではない。信じられない」と声を落とした。近くに住む男性(67)も「地域の役を進んで引き受けていた。平穏な地域だったのに…」と顔をゆがめた。
浩之さん方では、妻方子(まさこ)さん(59)、母静子さん(84)も遺体で見つかった。方子さんは市訪問介護事業所で介護士の手配などを担当。同僚は「まじめで明るく、信頼の厚い人だった」と惜しんだ。
母の静子さんは短歌のグループで活動。近所の男性(73)は「柔らかい笑顔で、親切な人だった」と話し、穏やかな家族を襲った悲劇にうなだれた。
一方、別の民家からは住民の平野毅(たけし)さん、恒子(つねこ)さん(79)夫妻が遺体で見つかった。元洲本市職員の毅さんは町内会長を務めたこともあり、住民は「地域の世話をしてきた人で、今も相談役。控えめに夫を支える恒子さんと、仲のいい夫婦だった」と話す。
最近は孫夫婦と一緒に暮らすため、自宅の隣に家を建築中で、7月に完成予定だった。工事を担当した建設業の男性は「同居をあんなに楽しみにしていたのに」と悔やんだ。
【自ら通報「刺された」】
「刺された」-。絶命の寸前に振り絞られた叫び。洲本市で9日、男女5人が刺され、死亡した事件。最初の110番は、凶刃の犠牲となった平野浩之さん自身からだった。息も絶え絶えの通報は「家に(平野)達彦(容疑者)が入ってきて刺された」と告げ、切れたという。
「逃げえ」。浩之さんはその直前、長女(32)に向け叫んだ。その声を背に、約100メートル離れた隣家へ飛び込んだ長女。「近所の人が来て、お父さんとお母さん、おばあちゃんが刺された」。ガタガタと震えながら、電話を借りて警察に通報。その後は玄関に座り込んだまま震えが止まらなかったという。