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京から富岳へ~スパコンの今

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通常の天気予報では全く捉えられないゲリラ豪雨の雲が、ビッグデータ同化によって詳細に再現された(理化学研究所提供)
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通常の天気予報では全く捉えられないゲリラ豪雨の雲が、ビッグデータ同化によって詳細に再現された(理化学研究所提供)
再現されたゲリラ豪雨のシミュレーション画像(右上)。実際に観測されたデータ(左上)とほぼ同じ形状となっている(理化学研究所提供)
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再現されたゲリラ豪雨のシミュレーション画像(右上)。実際に観測されたデータ(左上)とほぼ同じ形状となっている(理化学研究所提供)
研究成果をたたえる数々の表彰状を背に笑顔の三好建正チームリーダー=神戸市中央区港島南町7、理化学研究所計算科学研究センター
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研究成果をたたえる数々の表彰状を背に笑顔の三好建正チームリーダー=神戸市中央区港島南町7、理化学研究所計算科学研究センター

 江戸時代に既にあったという天気予報は、以前は「当たらないもの」の代名詞だった。だがコンピューターの導入で精度が格段に上がり、現在は、災害から身を守る重要な生活情報となっている。今は1時間ごとの詳細な予報も一般的となり、インターネットで現在地の雨雲画像を自由に見られる。そんな中でも、神戸・ポートアイランドのスーパーコンピューター「京(けい)」(8月30日にシャットダウン)で生まれたゲリラ豪雨予測は、「天気予報の革命」とも呼べる画期的な手法だ。(霍見真一郎)

 近代的な天気予報は、19世紀に入って通信手段が発達し、離れた複数地点のデータを共有できるようになったことに始まる。天気図が生まれ、気象学が一気に発達した。ただ、昔の予報官は、勘と経験に基づく「主観」で推測。観測地点も少なく、手で描く等圧線は、人によって大きく異なった。それが“客観予測”に替わる契機になったのが、コンピューターの導入だ。

【動画】「ゲリラ豪雨を再現」はこちら

■データ同化

 世界トップクラスの性能を誇る京だから、即座に精緻な天気予報ができるかといえば、そうではない。京を活用できるようにする、さまざまな物理法則を反映した独自の方程式を編み出す必要があるのだ。さらに、シミュレーションができたとしても、予測は時間と共にどんどん実態と離れるため、「データ同化」が重要になる。データ同化とは、気圧や温度、赤外線など多様な観測データを統計処理などでシミュレーションに融合させ、実態に近づけていく手法。しかし極めて高度な技術が必要となる。

 京を使った気象予測のため、データ同化の専門家だった理化学研究所の三好建正(たけまさ)チームリーダー(42)が目を付けたのが、神戸市西区に国の機関が設置した「フェーズドアレイ気象レーダー」だった。一般的なパラボラレーダーでは粗いデータの取得でさえ5分かかるが、元々軍事用に開発されたフェーズドアレイによって、30秒で全方向の隙間ない観測データが得られるように。それを分析に活用した。

■雨粒の動き計算

 シミュレーションの題材としたのは、2014年9月に神戸市で発生したゲリラ豪雨。当時のレーダー情報を取り込んで同化させ、さらに対象地域を100メートル四方に区切って細かく雨粒の動きを計算した。すると、データ同化しない通常の天気予報では全く捉えられなかった、ゲリラ豪雨の雲が詳細に再現できた。

 30秒ごとの「ビッグデータ同化」で、30分先のゲリラ豪雨を予測するシステム。この世界初の手法を開発した三好氏は「膨大な計算量で、京がなければ試そうと思わなかった」と話す。それまでのコンピューターシミュレーションでは全く見えなかった、ゲリラ豪雨の“しっぽ”をつかんだ瞬間だった。

 京の後継機「富岳(ふがく)」は最大100倍の性能を目標としている。三好氏は「天気予報はどこまでいっても不確実。でも100倍の性能があれば、災害時の意思決定に役立つ予測のバリエーションが100通り描けるようになる」と話す。

2019/9/4

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