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京から富岳へ~スパコンの今

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神戸・三宮の地下街「さんちか」でのAI空調実験のイメージ。高い場所と低い場所の気温差、人の流れを予測し、空調を制御する(神戸大提供)
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神戸・三宮の地下街「さんちか」でのAI空調実験のイメージ。高い場所と低い場所の気温差、人の流れを予測し、空調を制御する(神戸大提供)
レーザーセンサーで捉えた2018年4月19日朝の「さんちか」の人の分布(神戸大提供)
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レーザーセンサーで捉えた2018年4月19日朝の「さんちか」の人の分布(神戸大提供)
実験を主導する神戸大の長廣剛特定プロジェクト研究員=神戸大
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実験を主導する神戸大の長廣剛特定プロジェクト研究員=神戸大

 8月30日に電源が落とされたスーパーコンピューター「京(けい)」では、研究者らが複雑な方程式を使って膨大な計算をし、現象を再現・予測したり新技術に活用したりしてきた。しかし、京ではほとんど使われなかった分野がある。人工知能(AI)だ。後継機「富岳(ふがく)」にはAI研究を加速する機能も盛り込まれるという。最終回は、AI研究の最前線を紹介し、富岳の可能性を探る。(霍見真一郎)

 広大な地下街で、特定区画の気温を1度下げるには、少なくとも15分はかかる。制御室で機器を動かして空間の温度を変えるのは、家のエアコンとは別物だ。一方、通行人がその区画を通る時間は数秒でしかない。気温変化にリアルタイムで対応する温度調整は、現時点では不可能だという。だから大半の地下街は、均一に冷やし続けてきた。

 しかし、もしその区画の気温が何度になるか事前に予測できたら-。

 神戸大などの研究グループが、神戸・三宮の地下街「さんちか」で、人の流れや適切な空調制御を人工知能(AI)で予測する実証実験を続けている。昨年の結果で、最大4割超の電力削減につながり、年間では数千万円分の空調費削減が見込めると分かった。その効果の大きさが伝わると、全国の地下街や空港、百貨店など計約100団体が相談や見学に殺到。すでに具体的なプロジェクトも複数始動している。

【動画】「さんちかの人の流れ」はこちら

■冷やさない場所も

 さんちかの広さは、延べ約1万9千平方メートル。実験では異なる高さに温度計や湿度計、二酸化炭素濃度計合わせて93台を設置し、1分ごとのデータを取得。さらにレーザー機器で人の流れも捉え、天気予報データも活用した。AIで翌日の人の分布を区画ごとに予測し、原則27度になるよう72ブロックで温度調整した。

 研究を主導する神戸大の長廣剛特定プロジェクト研究員は、このAI空調の肝を「冷やす必要がある面積を削減すること」と明かす。地上に通じる開放部からの外気を人工的な気流で抑制するなどの工夫もするが、AIで必要がないとされた区画は一時的に「冷やさない」ことで、桁違いの省エネ効果を生んだ。

 最近、家電でもAIをうたうものが増えてきている。しかし長廣さんは「家電にAI自体は入っていない。AIで導いたプログラムに基づいて動かしているだけ」と話す。さんちかのAI空調は、データ学習によって、プログラム自体をどんどん変えていくという。

■“見える化”へ

 こうした成果を受けてさんちかでの実験は今年6月、完全AI制御に移行した。機械が、省エネにつながる予測や制御、結果の関係性を自己学習し、その成果を空調に反映させている。それでも長廣さんは「空気の“見える化”が、まだできていない」と話す。地下街の気温分布をシミュレーションしようとしても、実測値と乖離(かいり)するという。熱を帯びた外気や、通行人が作る風の影響がつかめないことが可能性として考えられる。もしそれを含めて予測するなら、地下街の上にある町並みを詳細に再現し、風向きなどを気象予測とは比較にならないほどの精度で数値化しなくてはならない。

 想像を絶する複雑かつ膨大な計算。京では難しかったが、AIに強く、性能が最大100倍となる後継機富岳ならどうか。予測への挑戦は始まったばかりだ。=おわり=

2019/9/18

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